生稲晃子外務政務官が2022年8月15日の終戦の日に靖国神社(東京・九段北)を参拝したと誤報した共同通信は11月30日、検証記事を配信した。国会議員が数多く参拝に訪れるため、他社の記者とLINEで情報を共有したものの、他社の記者が見間違えた情報をそのまま配信した、としている。
共同通信関係者によると、この他社とは、ライバル社でもある時事通信の記者だった。この記者が、生稲氏と他の女性議員を間違えたという。
この日、靖国神社を参拝していたのは稲田朋美元防衛相、松川るい参院議員、杉田水脈衆院議員(当時)ら。生稲氏は稲田氏よりほぼひと回り下で、松川氏より背が低い。杉田氏とは髪型が違う。間違えることはないとみられるが、先の共同通信関係者は、
「参拝のため、みな黒っぽい衣装である上に、当時の写真を見ると、稲田氏は生稲氏と雰囲気が似ていたので、勘違いしてしまったのかもしれない」
当の時事通信は生稲氏の名前を挙げなかったが、共同通信はスポーツ紙にも記事を配信するので、元芸能人として知名度の高い生稲氏の名前をあえて記事に盛り込んだため、誤報につながった。時事通信は共同通信の誤報を伝えた際、自社の記者が見間違えたことには触れなかった。
最近の選挙でSNSの影響力が増しているのに対し、共同通信をはじめオールドメディア側は「SNSは事実関係なんて確認せずに発信するが、われわれメディアは確認作業を行い、校閲も通すなどチェック体制にも手間をかけている。信頼性という意味で大きく違う」と強調していた。
今回の共同通信の誤報は、オールドメディアのチェック体制が胸を張るほどではないことを、図らずも露呈する形となってしまった。
(田中紘二/政治ジャーナリスト)