Tさんの愛猫ミカンの診断結果は「リンパ腫の疑い」。8月下旬、東大の動物物病でのことだった。人の場合もかつては胃や大腸のガンが多かったが、最近はリンパ腫という病名を聞く機会が増えている気がする。胃とか腸のガンに比べると漠然とした感じで、どこがどうなるガンなのか、イマイチわからないのだが。
東大の動物病院の医師にはこうも言われた。セカンドピニオンのために診察してもらった2番目の病院の診断で、ミカンちゃんは命拾いしたかもしれない、と。
「その段階で逝ってもおかしくないくらい、ミカンちゃんはギリギリの状態だった。2番目の病院でステロイド剤を処方したのがよかったと思う」
病状はそれほど逼迫していたのだ。
検査結果が出たその日から、抗ガン剤の投与が始まった。予定していたのは4種類。最初は最も弱い抗ガン剤を打ち、命拾いになったというステロイド剤を同時に服用。それを1週目として、2週目には次の抗ガン剤、3週目はまた次の抗ガン剤を打ち、4週目は最も強いものを…。その翌週はお休みだ。それを6カ月、続けることになった。
最初に抗ガン剤を打ってから1週間後、レントゲンを撮ってもらった。最初の診察時には気管が10分の1くらいまで細くなっていたが、なんと4割程度、回復していた。その週は2番目の抗ガン剤、3週目に3番目の抗ガン剤と続けた。
ところが、吐き気と下痢が始まったという。それで吐き気止め、下痢止めの薬を飲むことになったのだが、予約が必要な東大の動物病院に頻繁に通うことはできないので、セカンドオピニオンで診てもらった病院と協力できるように、自宅での吐き気止め注射の仕方、スポイトでのご飯のあげ方、点滴のやり方などを教えてくれたという。
「ミカンは副作用に弱いタイプだったようです。2番目、3番目の抗ガン剤は8掛けくらいの量に調整していただいたのですが、グーガーという呼吸の音がぶり返してしまい、薬が効いていないのがわかりました。それで先生は、静脈注射する4番目の強い抗ガン剤だけでなく、2番目と3番目の抗ガン剤も止めて、最初の弱い抗ガン剤とステロイドを使った治療方法に方針を変更してくれて。それからです、薬が劇的に効いてよくなったのは。呼吸が安定して咳き込まなくなり、メキメキと元気になりました」(Tさん)
一時は体重が7キロから5キロまで落ちたという。それが今では回復し、抗ガン剤の投与は本来の1週間に1回から、2週間に1回になった。
治療費の具体的な額は教えてもらえなかったものの、
「意外ですが、普通の動物病院よりは安いと思う。助かっています」(Tさん)
ただ、猫の保険に入っていれば、支払った金額の6掛け、7掛けで済んだかもしれない。
ちなみに、ガンで死んだウチの猫ジュテ(写真)の場合、闘病期間は1カ月半だった。最後は業者に運び入れてもらった酸素室に入れ、かかった費用は19万円超。保険に入っていて、支払われた保険金が15万円弱、持ち出しは4万円くらいで済んだ。
最後に。猫のガン治療には、放射線もあるという。最先端をいく東大の動物病院でも、まだやっていないものだ。都内や近県にあるので、放射線治療を希望する場合はそちらを受診するしかないが、病院が少ないため、予約を取るのに3週間はかかるという。こちらは抗ガン剤治療よりも高額で、100万円くらいは費用がかかるそうだ。
猫の命を救ってあげたいとはいっても、なかなか手を出せないかもしれない。
(峯田淳/コラムニスト)