「まるで『マイルチャンピオンシップ』のようなレースになると思いますよ」
12月8日は2歳女王、そして来年の「桜花賞」などのクラシック候補を決める「阪神ジュベナイルフィリーズ」(芝1600メートル)が京都競馬場で行われるが、その馬券戦略が、冒頭の馬券師ライターT氏の言葉である。
11月17日のマイルCSは、エリザベス女王杯を勝っていたブレイディヴェーグが1番人気に推されたが、最後は差し届かず4着。ソウルラッシュが1着、そして2着にエルトンバローズ、3着にウインマーベルが入線し、3連単は12万8450円。これをT氏は本命対抗で見事に的中させている。
「阪神競馬場の改修で、今年の阪神JFは初の京都開催になる。これは過去のデータが全く役に立たないことを意味します。ならば何が参考になるかといえば、直近の同距離GⅠですね。ブレイディヴェーグを筆頭に、中距離重賞で活躍できる人気馬が総倒れして、ソウルラッシュやウインマーベルのようなマイル以下が主戦場の短距離馬が大外から差してきた…あのマイルCSと同じレースになると言いたいのです」(T氏)
大外から併せ馬のように決着したマイルCSの上位3頭は全て、7枠と8枠。それどころか、8着までに入線した馬で内枠(1~4枠)は4着のブレイディヴェーグしかいなかった。T氏が続ける。
「今週で京都は10週連続開催。芝の内側は荒れた状態で、大きく先行してギリギリもちこたえる以外は、強い馬でもジリジリとしか伸びない。ましてや多頭数なら、外側の芝を通った馬が圧倒的に有利でしょう。過去のデータを使えない今年のレースは、まず枠順で取捨することをお勧めしたい」
やはり7枠と8枠のようだが、ここからの選定は意外と難しいと、馬券ファンは考えるはずだ。だがT氏にはすでに「見えている」と豪語する。
「今回の阪神JFは、来年の桜花賞は別として、オークスなどの中距離クラシックには直結しません。阪神と京都の開催で違う部分はそこにある。ソウルラッシュのようにマイル以下が主戦場になる馬で、4角の下り坂からスピードで押し切る、またはその流れを差せるだけの、京都での成功体験があるか否かは重要です。そして京都のマイルといえば、圧倒的にキングカメハメハの血が強いことは、頭に入れなければなりませんね」
以上の分析からT氏のイチオシは、前走で同条件のデイリー杯2歳Sを勝った7枠14番のランフォーヴァウのようだ。
「キンカメの血が入っているという点で、13番のコートアリシアンも買いですが、京都実績のあるランフォーヴァウを1番手、コートアリシアンを2番手にしたい。枠順確定前はビップデイジー(1枠1番)とダンツエラン(2枠3番)を相手として考えていましたが、ちょっと枠が内すぎる。よほど上手く立ち回らないと、馬券にならない可能性が高い。3着の押さえ程度の評価にします」
事前のオッズ予想では、ランフォーヴァウは8番人気、コートアリシアンは4番人気となっている。では1番人気確実な、ルメール騎乗のブラウンラチェットの取捨はというと、
「直線に坂のある中山と東京で2連勝。通常の阪神開催なら同じように直線でグンと伸びて、ブラウンラチェットが勝ったでしょう。ですがこの馬は血統的に、明らかにオークスなどの中距離が向くタイプ。京都の平坦マイルが合うとはとても考えられない時点で、1番人気ならば買うのは愚策ですよ。マイルCSのブレイディヴェーグの二の舞になるはずです。ならば逆に、来年のオークスとは無縁そうな馬を買えばいい。母父ダイワメジャーで距離短縮が向く、6枠12番のアルマヴェローチェ(7番人気=予想オッズ)、前走を京都外回り1400メートルで圧勝した典型的な短距離差し馬の7枠15番リリーフィールド(12番人気)、デットーリ騎手を従えてやって来た8枠17番の外国馬メイデイレディ(2番人気)を買っておくべきですね」(T氏)
とにもかくにも徹底した外枠攻めで、1番人気を蹴っ飛ばす。馬券師の2歳女王決定戦は「大荒れ外差し3連単」で勝負となる。
(宮村仁)