競馬界はJRA賞の話題がいたるところから聞こえてくる季節となった。リーディング・ジョッキーの新人部門では、栗東・藤岡健一厩舎の高杉吏麒が42勝を挙げて独走中。2位の吉村誠之助が31勝ゆえ、JRA賞最多勝利新人騎手はほぼ決まったとみていいだろう。
10月2週目以降は8週連続勝利中と、勢いもある。過去10年の受賞者で最も勝利数が多かったのは2022年の今村聖奈で51勝だが、どこまで肉薄できるか楽しみだ。
高杉はあるインタビューで「気合と根性は絶対に負けません」と言っていたが、それは騎乗ぶりを見てもよく分かる。1頭でも多く抜こうという執念が見てとれるのだ。
若手はおおむね、逃げ・先行を心掛けて騎乗するが、高杉の連対時の脚質は逃げ13・先行20・差し25・追込4となっており、中団より後ろからの連対率が半分近くを占める(12月1日現在)。これは珍しいことだ。
ちなみに、昨年のJRA最多勝利新人騎手・田口寛太は逃げ7・先行44・差し16・追込3だった。2人を比べてみると、その違いがハッキリする。
この週末は中京で土曜10頭、日曜11頭に騎乗。一番の注目馬は日曜5R・新馬戦のドゥマーヴェリック。国内外で重賞3勝を挙げたバスラットレオンの半弟で、早くからメディアで取り上げられていた期待馬だ。
さて、ここで2歳牝馬の女王決定戦、阪神ジュベナイルフィリーズ(GⅠ、京都・芝1600メートル)に触れておきたい。
出走できるか気になっていたショウナンザナドゥが、9分の2の狭き門(抽選)を突破。出走が確定した。人気になるであろうブラウンラチェットにはアルテミスSで0秒2差負けて3着となったが、上がりはこちらが0秒1速かった。まだ決着がついたとは言えない。今回と同じ舞台で勝っているのは強調材料になる。その時の走破時計1分33秒5は出走馬中で一番だ。持てる力をフルに発揮できれば、勝ち負けしても不思議ではない。
アルテミスSを2着だったミストレスも、その能力は相当なもの。新潟で新馬勝ちした後、中1週で挑み、ブラウンラチェットと0秒2差の勝負をしたのだから価値がある。1週前調教で併せたホウオウプロサンゲ(古馬3勝)を0秒5突き放してみせたように、気配は上々だ。
ブラウンラチェットを含む、キズナ産駒3頭の走りが見ものである。
(兜志郎/競馬ライター)