昭和・平成期にテレビの顔として活躍した名司会者・小倉智昭さんが旅立った。
12月10日、小倉さんが9日に逝去したことを、所属事務所が発表。膀胱ガンを患った2016年から闘病生活を続け、亡くなる直前まで仕事に励んでいたが、11月末に強い腰痛で検査したところ、骨盤、腰椎、髄膜にガンが転移していることが判明。12月に入り、体調が急変したという。
生前は「情報プレゼンター とくダネ!」(フジテレビ系)のほか、「世界まるごとHOWマッチ」(TBS系)や「巨泉のこんなモノいらない!?」(日本テレビ系)でのナレーションなど、多くの番組で親しまれていた。生前の姿を知るテレビ関係者が振り返る。
「世間では怒りっぽいイメージを持たれていたかもしれませんが、実際はものすごく穏やかな人。末端のスタッフにも丁寧に接して、イライラして怒鳴ったりとかは絶対にしない。以前、あるスタッフが小倉さんに『子供が野球に興味を持っている』と何気なく話したところ、その翌日にはジュニア用のバットとグローブ一式をプレゼントしていました。まさしく『気配りの人』でした」
温厚な人柄の小倉さんだが、本当に怒った出来事があった。
今年2月に刊行された社会学者・古市憲寿氏との対談集「本音」(新潮社)の中で「爆笑問題の太田光には本気で怒ったことがありました」と明かしているのだ。
その原因となったのが「カツラいじり」。2007年10月の「たけしの日本教育白書」(フジテレビ系)の生放送で、小倉が着用を公言しているカツラについて、太田がイジり倒したのだ。
小倉さんの仕事が年々増えているという話題で、太田が突如「髪の毛が…」と発言。「髪の毛は便利な方がいい」といなした小倉さんに対し、さらに太田は「いろいろと着脱式だとか…」と悪ノリ。その結果、番組のラストで太田が深々と頭を下げて謝罪することになった。
同書で小倉さんは、太田によるイジリについて「番組の趣旨とも関係なくて」「そこから上質な笑いに転化していれば話は別」と指摘。「もう太田とは一緒に仕事をやらない」と伝えたと述懐している。
「自分がイジられたことだけでなく、共演した番組での脈絡のない中途半端なふざけ方が許せなかったのでしょう」(前出・テレビ関係者)
プロとしての姿勢を貫いた小倉さんであった。
(川瀬大輔)