来年1月2日と3日に行われる箱根駅伝まで、残すところあとわずか。今回で101回目となる箱根駅伝では「総合優勝で前田康弘監督を大号泣させたい」として三冠に挑む国学院大と王座奪還を目指す駒沢大、そして2連覇を目指す前回王者・青山学院大による熾烈なデッドヒートが予想される。
箱根駅伝は大手町の読売新聞社前をスタートし、箱根芦ノ湖駐車場入り口までが往路。それを折り返す形になるのが6区から10区までの復路だ。現在、最長距離となるのが往路では「花の2区」、復路では「大逆転の9区」と呼ばれる鶴見~戸塚間の23.1キロだ。
一方、最短となるのは往路5区、復路6区の「山の上り下り」である20.8キロとなっている(2017年1月開催時から)。
そんな中で5区の距離をめぐり、駅伝で解説者を務める瀬古利彦氏の口から「1区から4区はいらない」との「問題発言」が飛び出し、関係者を唖然とさせたのが2010年のことだった。5区で巻き返した走者は「山の神」「山の魔人」とたとえられるが、山を登っていく5区ではそれまでの結果が一気に覆されることがままあり、大学関係者からもその距離を問題視するの声が少なくなかった。
「箱根駅伝最大の醍醐味は、やはり山の上り下りで、そこで幾多のドラマが演じられてきたことは事実です。ただ、5区の出来で勝負が決まる確率が高くなることで、レース自体の面白さが半減してしまう懸念があります。山梨学院大の上田誠仁監督や東海大の新居利広監督らは関東学生陸上連盟に対し、23.4キロから2006年以前の20.9キロに戻すよう直訴したことはよく知られる話です」(スポーツ紙記者)
そんな中、2009年の85回大会で彗星のごとく現れたのが「新・山の神」こと東洋大の柏原竜二だった。2002年に旭化成から川嶋伸次監督を迎えた東洋大は、シード権獲得常連校だったものの、優勝はなし。この年も4区終了時点で9位だった。
トップの早稲田大とは4分58秒もの差が付けていたが、なんと5区の柏原(当時1年)が大逆転で往路優勝。復路でも早稲田大と競り合いながらも、粘りを見せた東洋大が見事に初優勝に輝いたのである。
改めて5区がクローズアップされる中で迎えた翌2010年。驚くことに、またもや柏原は、トップとの4分26秒差をひっくり返し、なんと後続を3分36秒も引き離す快走を見せ、東洋大学の2連覇に貢献。口あんぐりの瀬古氏が思わず口走ったのが「1区から4区はいらない」だったのである。
(山川敦司)