日本人の10人に1人はいるという「左利き」。「器用」「芸術的な才能がある」などといったイメージがあるが、プロ野球では約20%が左利きだという。一般的な割合よりも多いのは、特殊な能力を持ち併せているからだろうか。
ここで「オヤッ?」と思った人はいないだろうか。20%も左利きがいるのに、なぜ一塁手を除く内野手に、左投げの選手が見当たらないのか。もちろんルール上はどちらでも問題ないのだが、やはりやっかいなのは「ゴロの捌き」だ。
例えば左投げの遊撃手や三塁手の場合、ゴロを捕った後で一度、背中を本塁方向にひねらないと、一塁には投げることができない。捕球後、いち早く一塁に送球することが求められる内野手には、左投げは不利になるというわけだ。
かといって、左投げの内野手が全くいないわけではない。今年11月7日から10日にかけて開催された、中東南アジア9カ国が参加する初の国際大会「アラブ・クラシック」では、インド代表としてまさかの左投げ遊撃手が出場。守備機会ではゴロを素早く捌くと、正確に一塁へ送球し、見事にアウト。解説のベネズエラ出身の元メジャーリーガー、エルビス・アンドラスは思わず「アメージング!」と驚愕するしかなかった。
現役時代に3冠王を3度獲得し、一塁・二塁・三塁手の経験がある落合博満氏は自身のYouTubeチャンネルで、ファンから「左投げ内野手の可能性」について問われると、こう持論を展開している。
「不利だからっていうことなんだろうけど、やってやれないことはない。能力があれば、左投げの内野手がいてもおかしくはないんだろうと思います」
日本では高校野球で左投げの三塁手が登場したことはあるが、プロでは現在、一塁手以外はゼロ。落合氏が納得するほど能力のある選手は、今のところ出現していないのだ。
将来、広島の遊撃手・矢野雅哉をさらに圧倒するような「鬼肩」の選手が現れれば、左投げのデメリットをあっさり克服してしまう可能性はあるかもしれないが…。
なにやら夢が膨らむ話なのである。
(ケン高田)