「猫は犬のように外を散歩するのか」をテーマに、我が家の猫で「実験」をしてみた結果、どうなったのか。
3兄弟のガトー、クールボーイ、そうせきは保護猫活動のお手伝いをしているMさんを通して、譲渡してもらった猫だ。脱走癖のあるクーは2度も我が家を抜け出し、近所の野良猫トラちゃんの棲み処で過ごした。戻ってからはサッシ回り、2階のベランダなどから出て行けないようにガード。散歩などもちろんNGだ。あとの2匹のうち、散歩する可能性があるのは、末弟そうせきである。
前回の記事では、ハーネスをつけて玄関の外に出してみたらどうなったか、までを書いた。不安そうな目でこちらを見つめ、「ミャー、ミャー」と心細げに鳴く。かわいそうになり、家の中に入れてやることにした。
当初、Мさんには、こう言ってみた。
「そうせきは散歩する猫かもしれないから、ハーネスとリードでやってみようかな」
すると「ダメ、ダメ」と言下に否定される。その代わり、
「散歩させるならペット用のカートがあるから、それなら安全よ」
要するに、ペット用のバギーだ。値段は7000円くらい。これに乗せて開け閉めだけきちんとすれば、確かに飛び出す心配はなさそうだ。
しかし赤ん坊でもないのにバギーで散歩って…と思ってしまう。動物も赤ん坊もかわいがるという意味では同じでも、やはり猫は猫らしくかわいがってあげたい。やはり動物らしいのは散歩ではないかと。
猫にも犬にも「野生」がある。飼い慣らされている場合でも屋外、野外を自由に走り回らせたいと思わずにはいられない。ガトーのように根っからの家猫ならいいけれど、そうせきのように出てみたいかもしれない猫ならもう一度、試してみようかという感じに。
実は夏頃には散歩させようと思っていたのだが、夏の間は草むらにノミやダニなどがいて、毛のある猫に一瞬で潜り込む…そんなアドバイスを受けたのだ。もしノミがくっついてきたら、猫も人間も迷惑だ。
エイズに感染する心配もある。とはいえ、ガトーとそうせきはワクチンを接種しているのと、散歩の途中で野良猫とケンカするような状況にはならないため、猫エイズを心配する必要はなさそう。
というわけで、やっと寒くなってきた12月に入って、そうせきを再び散歩に連れ出してみることに。
前回連れ出したのは昨年。それに比べると、そうせきの体は当然、大きくなっている。3年前に死んだジュテが着用したハーネスはさすがに小さくなっており、キツキツ。そのせいか、そうせきは前回以上に嫌がって、なかなか両手を通してくれず。
どうにか装着できたらまず、昨年と同じように、3階のベランダに連れて行くことに。でもなぜか外に出るのも嫌がり、足をツッパらせている。
「大丈夫、大丈夫」と言うと、恐る恐る匍匐前進しながら、腰が引けているような歩き方に。「怖いか」と声をかけると、情けない感じで「ミー」と鳴く。ハーネスが窮屈なのかなという気もするが、異なる環境に放り出された気がして、おっかなビックリなのかも。去年と同じように、幹線道路を走る車の音が怖いのかな…。
そうせきを抱いて、思い切って玄関に連れて行く。ガトーも一緒についてきた。ガトーは来客があるとお出迎えして、三和土にゴロンと横になって「撫でてくれ」と催促する猫だ。玄関方面に向かったので、誰か来たかな、何かあるかなと思ったようだ。
玄関のドアを開け、そうせきをゆっくり床に降ろす。やや体が震えている。
「大丈夫だよ、お前は弱虫だな」
そう言いながら、玄関前に3段ある階段まで連れて行くと、後戻りするような仕草。それを見て、本当に怖いんだな、嫌なんだなというのがわかった。
「よし、よし」とそうせきを抱っこして、玄関を開ける。目の前にはガトーがいて、外をうかがうようにしている。そうせきを床に降ろすと、ペタッと座り込むような姿勢に。地べたに張り付いていれば、お兄ちゃんもいるし、外が見えていてもOKという感じだろうか。しかも、さっきまでは震えていたのに、なんだか偉そうである。
「お前は内弁慶だな」
そこがぼっちゃん(そうせき)のかわいいところなのだが。
そうせきは無理に散歩させなくてもいい猫。ちょっと残念だ。散歩に出るのを喜んでいたジュテのことを、懐かしく思い出してしまった。
(峯田淳/コラムニスト)