デビッド・ベッカムにケンカを売った破天荒な男は、移籍も型破りなものだった。サッカー元日本代表の大久保嘉人氏は、前園真聖氏のYouTubeチャンネルで、ドイツ・VfLヴォルフスブルク移籍の常識外れな経緯を明らかにした。
まずはサッカーの欧州移籍について、スポーツ紙サッカー担当記者に聞こう。
「Jリーグから欧州への移籍は、通常であれば欧州のクラブから獲得のオファーがJクラブに届き、それが代理人を通じて選手に伝えられ、本人の意向を確認します。移籍したいとなれば、クラブ間で移籍金など条件面の話し合いが持たれ、合意すれば移籍です。クラブ同士の話し合いを経て移籍するのが当たり前ですね」
ところが大久保氏のドイツ移籍は、まるで違っていた。当時はヴィッセル神戸に所属していたが、ヴォルフスブルクのフェリックス・マガト監督からは、3度目のオファーを受けた。大久保氏はそれに感動し、
「(ヴォルフスブルクに)行くのはまだ決めないけど、練習と試合を見てから決めると、ドイツに行った。練習と試合を見て、やりがいあるなと。でも契約するつもりはなかった。マガトは監督兼GMで全権を握っていた。マガトの部屋に呼ばれて『お前、いくらがいい?』って言われて、俺はまだ行くとも言ってないと思いながらも、けっこう高い金額を行ったらOK。OKなんだ、それなら行こう。ヴィッセルにも、契約しに行くとは言ってない」
なんと、所属チームに無断で契約したと明かしたのである。
日本に帰国すると神戸に、
「契約しちゃいました」
と軽いノリで報告。ヴォルフスブルクと神戸の間で交渉が行われることなく、3年半の契約を結んでしまった。神戸にしてみれば憤慨するような移籍だが、すぐに認めてくれたという。
やはり大久保氏は破天荒な人物だった。今のおとなしい日本代表選手は、少し見習ってはどうか。
(鈴木誠)