牝馬クラシック第1弾、桜花賞。阪神芝1600メートルで争われるが、繁殖に上がる牝馬の値踏みをする最も価値のあるレースとも言える。というのも、2400メートルのオークスとは異なり、スピードと決め手は子供が受け継ぐべく最も大切な資質で、これが競走馬であるサラブレッドに与えられる評価基準になるからだ。
桜花賞、オークスの両方を勝てばなおさらだが、まずは桜花賞に出走できるだけでもたいへんな名誉と言っていい。
では、馬券的にはどんな傾向があるのか、過去のデータを見てみよう。
03年に馬単が導入されて以降、これまでの22年間、その馬単での万馬券は4回(馬連2回)。この間、1番人気馬は5勝(2着9回)。2番人気馬は8勝(2着4回)。1、2番人気馬によるワンツー決着は6回。1、2番人気馬が半数以上(26頭)連対を果たしているように、人気馬同士での決着になるケースも多いが、14年のハープスター以降、10年連続で1番人気馬が勝利を飾っていない点は、頭に入れておいたほうがいいだろう。
つまり、まずは各馬の能力を値踏みすることが肝心。22年のスターズオンアース(7番人気1着)、17年のレーヌミノル(8番人気1着)のように、これまで評価されていない馬が大きく化けることもよくあるからだ。それだけこの時期の若駒の評価は簡単ではなく、馬券的にもおもしろいGⅠ戦と言えるだろう。
しかも今年は、相手関係を含め、絶対的な強さを発揮して本番にコマを進めてきた馬が見当たらない。その意味では、この本番での下剋上があっても不思議はない。そうしたことを踏まえて、穴党として最も期待を寄せたいのは、リンクスティップだ。
未勝利戦を楽に勝ち上がったあとの前走は、牡馬に伍してきさらぎ賞に挑み、サトノシャイニングに3馬身差で斬り捨てられたものの2着を確保。賞金を加算させて桜花賞への挑戦権を手中にした。いきなりの重賞挑戦を思えば上々のレース内容だったと言えよう。
その後は短期放牧を挟み、ここ一本に照準を合わせて丹念に調整を積んできた。1週前の追い切りも軽快でリズミカル。実にいい動きを見せていた。
「体調はさらに良化しているし、キャリア3戦と浅い中、確実に力もつけている。楽しみは十分ある」
そう厩舎関係者は口をそろえ、仕上がりのよさを強調するほどだ。
キタサンブラック産駒で前走(芝1800メートル)からの距離短縮、初めてになるマイル戦がどうかだが、このあたりも「スピードがあり、追ってもいい馬。折り合い面に課題があるわけではなく、十分やれていいと思っている」と、西村調教師は強調する。
バランスの取れた好馬体に加えて、北米の一流血脈で、一族に名種牡馬ノーザンダンサーがいるように血統(母系)もいい。道悪になっても不安はなさそうで、晴雨にかかわらず大きく狙ってみたい。
逆転候補は、チェルビアットだ。
前走のフィリーズレビュー(14番人気)でも本命視して、みごと2着を確保。桜花賞の出走権を得たが、これはひとえに、揉まれ弱さなど精神面の成長が見られたということ。こうなれば鬼に金棒である。
母系はステイゴールドをはじめ、活躍馬がズラリといる良血。この馬もバランスの取れた好馬体で、もともと素質は高く評価されていた。さらに体調がアップしているとなれば、勝ち負けになっていい。