24年2月に、コンビを解散し、吉本興業を契約解除となった元プラス・マイナスの岩橋良昌(46)。退所のきっかけとなったのは、芸能界、テレビ界の闇を暴く度重なるXなどSNSでの発信だった。しかし、現在の境遇になったことに後悔はしていないようで。
取材当日、岩橋は明石家さんまらとゴルフをラウンドしてから駆けつけてくれた。
「今日はさんま師匠と、ネプチューンのホリケンさん、さらば青春の光の東ブクロくんと回りました。『岩橋治療の会』というのを月1で開いてくれて、一緒にゴルフをしています。ボクのメンタルがおかしくなっているから月に1回様子を見ようという会です。今は大阪に住んでいるので、そのたびに上京しています」
そう明るく話す岩橋だが、24年1月が明けたとたんに人生が大きく変わる発言で物議を醸した。
〈プレバトかー あの大パワハラ社長の会社の番組やなー〉(原文ママ、以下同)
いきなりこうXでつぶやいたのだ。「プレバト!!」(TBS系)とは、ダウンタウンの浜田雅功が司会を務める人気バラエティー番組だ。突然のプロデューサーに対するパワハラ告発だった。
「大阪の若手時代から、ずっと浜田さんと二人三脚でやってきて、虎の威を借るじゃないですけど、芸人に対してめっちゃ横柄な人なんです。ロケに行った晩の食事会とか、カメラが回っていないところで嫌な目に遭いました。取り巻きの芸人がわざと辛いものをワーッて率先して食ったりして、おもろない空間やった。ほんまにストレスでしたね。浜田さんはボクに東京進出を促してくれたほど可愛がってくれたし、好きやったけど、そういう時は笑って見ているだけだった。止めてほしかったですね。しゃーないかなって感じ。(社長から)謝罪は一切ないです。浜田さんからも、もう連絡はないです」
当時の岩橋のメンタルには、3年に一度起こる持病・強迫性障害の大きな波が訪れていた。それが引き金となり、言いたいことを全部吐いてしまおうというモードになっていたという。その後も暴走は止まらず、2月には〈あのときエアガンで俺を撃った真木よう子と平成JUMPの中島! 俺んとこに謝りに来い!!!!〉と怒りのツイートをしている。
「(宮川)大輔さんに呼ばれて、ボクは遅れて行ったんですけど、2人とは初対面でした。Hey!Say!JUMPは他のメンバーもいたけど、彼らはちゃんとしていましたよ。『岩橋さん、好きです』とか声かけてくれたりもして。でも、中におかしい人がいたってことです。それからは、テレビで中島を目にすると腹立ちましたよ。彼は完全にシカトを決め込んでいますから。浜田さんの番組に中島が出てるなんてことがあって、それは最悪でした。しかも、制作があの社長の会社だったからそろい踏みですよ!」
結果、現在はなるべくテレビを見ないようにしているという。
そうした騒動を通じ、岩橋は所属する吉本興業に対して不信感を募らせるようになる。
「被害にあったボクに対して『大丈夫? (事実を)確認するわ』というのがなくて、とにかく『ツイートを消せ消せ』の一点張りやったんです。守ってくれよと思っていたのに、相手をかばっているような感じがした。そんなのおかしいって言い続けたら、『無期限活動停止』となり、納得できず腹が立ち、辞めますってなりました」
フリーになってから、岩橋はいまさらながら〝古巣〟の力を思い知らされることになる。
「現在、テレビの仕事はゼロです。くりぃむしちゅーの有田さんが自分の番組で、ボクの出演を提案してくれているみたいなんですが、一切通っていないと聞いています。スタッフが『わかりました』と言っても、いつの間にか、その話がなくなっているっておっしゃってました。ボクは吉本を辞めましたが、芸人は辞めていないので、出られるはずなんですけどね。何かしら吉本との関係を壊さないようにという(テレビ局側の)思惑、力が働いているんでしょうね。実際、吉本芸人には『岩橋と絡むのはNG』というお達しが事務所から出ているという話も聞きました」
理不尽な思いをすることもあるが「地獄に仏」─一方で心強い仲間たちの絆には救われている。メンタルも徐々に回復傾向にあるようだ。
「ゴルフの際、ボクが仲間内で鋭いツッコミをしたら、さんま師匠も『戻ってる、戻ってる』と言うてくれました。実は今、彼女がいるんですが、『はよ、再婚せ〜。お前みたいなのに付き合ってくれる子がいるなんてないやろう。はよ、落ち着いて犬でも飼え〜』って(笑)。愛の言葉ですね。それとテンダラーの浜本(広晃)さんは、辞めてからもずっと変わらずお付き合いさせてもらっています。ほんと感謝しかないです」
テレビに出演する機会はなくなったが、フリーになってからも仕事が絶えることはないという。
「今は自分で仕事を受けてスケジュールを組んでいます。人に任せると不安になったり、イライラするので、自分でやった方が楽ですね。もうすぐ辞めて1年経ちますけど、預金の残高は辞めた時より増えています。ホスト、キャバクラ、バーなどでお客さんのテーブルを回っての賑やかしみたいな夜の営業もある。しんどい時もありますが、お金でこうなる(落ちる)というのは悔しいんで、やってやろうと思っています。そうそう昨日、やっと(上京時に購入した世田谷区の)家が売れました。少し貯金もできるし、毎月のローンがなくなってホッとしています」
そして、高校生の頃より治療を続けている持病に関しても、前向きに思えるようになった。
「強迫性障害は、毎回毎回やったらあかんことが襲ってくる。例えば、舞台袖に立つと『噛んだらダメだ』『違うネタをやったらダメ』『ツッコミが強すぎたら面白くない』とか。逆にそれをやってしまいたくなるので、やらないように、自分の中でおまじないをして『大丈夫』ってなってから出ていました。1日12ステージがあったら、12回それを処理して舞台に出ていかなければならなかった。その作業がしんどくて、今はそういうこともなくなったので心地いいです。他の人には理解できない苦しみがわかる人生なので、自由な立場である今、苦しんでいる方やそのご家族に自分の経験を伝えていきたいです。そこはボクの使命かなと思っています」
何度も困難を乗り越えてきたからこそ見える景色は、岩橋にとってプラスに働くだろう。取材を終えると、離れて暮らす元妻、子供たちに会うべく足早に去っていった。
岩橋良昌(いわはし・よしまさ)2003年、プラスマイナス結成。07年、上方漫才コンテスト最優秀賞受賞。24年、コンビ解散、吉本興業から契約解消される。現在はYouTube「岩橋ひとりチャンネル」、シャドウ岩橋としてひたすらご飯を食べるTikTokの動画を中心に活躍中。