JRAで過去に1000勝以上を挙げた調教師は15人。そのうち現役調教師は国枝栄師ただひとりだ。調教師で1000勝を達成するのがいかに大変なことか、これを見てもわかろう。
その国枝師はこれまでGⅠを23勝(JRA22勝、海外1勝)しているが、残念ながらダービーは勝っていない。来年2月で定年退職となるため、今年がそのラストチャンス。なんとしても勝ちたいだろう。
今週の京成杯(GⅢ、中山・芝2000メートル)に出走するガルダイアは、悲願達成への期待がかかる馬だ。2017年のNHKマイルC(GⅠ)を勝利したアエロリットの半弟で、昨秋の東京・芝1800メートルの新馬戦を、1番人気に応えて逃げ切ってみせた。騎乗するのは、初コンビを組む杉原誠人である。
前走のベゴニア賞は0秒2差の3着に終わったが、中団からしっかり脚を伸ばして、見どころ十分だった。結果論かもしれないが、1600メートルは向かなかった印象だ。エピファアネイア産駒らしいスラリとした馬体の作りからして、中長距離でこそ真価を発揮する馬だろう。その意味でも、京成杯のは力の見せどころとなる。
最終追いは美浦Wコースでプラチナトレジャー(7歳オープン)を2馬身前に置いて行われ、直線は外に進路をとり、馬なりのまま加速。一瞬で差を詰め、半馬身先着した。騎乗した杉原は、弾むようなフットワークに「乗り味がいい」と満足気だ。国枝師も「杉原は馬への当たりが柔らかく、リードするのが上手」とニッコリである。
国枝厩舎期待の3歳馬といえば、アロンズロッドを忘れてはならない。名牝アーモンドアイの初仔で、デビュー前から騒がれていた良血馬。残念ながら新馬戦4着、未勝利戦2着と惜しい競馬が続くが、その2戦目では追い出してからの反応が確かで、レース慣れしてきたように見えた。短期放牧を経て調整が進んだことで、今週18日の中山・芝2000メートル3歳未勝利戦に出走する。騎乗するのはこれまで同様、ルメールだ。
エンジンがかかるのが遅い馬だけに距離延長は歓迎だが、小回りな上に好時計が出ている今の中山には少々の心配がある。フルゲート18頭立てなので、スタートが決まらないと、捌くのに手こずるかもしれない。国枝師は「いい筋肉が付いて成長を感じる」と言って、負けられない一戦とみているようだ。
いずれにせよ、悲願のダービー制覇を果たすためにも、この2頭はしっかり結果を出す必要がある。
(兜志郎/競馬ライター)