プロ野球スカウトの目は節穴なのか、それとも見抜くことは困難なのか。昨秋のドラフト上位選手の「自主トレ離脱」が相次いでいるのだ。
ヤクルトのドラフト1位・中村優斗は1月23日に下半身のコンディション不良を訴え、新人合同自主トレに不参加。1月15日には上半身の違和感でノースロー調整となっていたが、そこへまさかの下半身問題。早くも満身創痍だというのか。
西武のドラフト1位・斎藤大翔も右肩の違和感で、自主トレでのスローイングを封印。昨年夏の石川県大会から痛み止めの薬を飲んでいたことを明かし、「しっかり治していきたい」と説明した。
振り返ってみれば、2023年も阪神のドラフト1位・下村海翔が春季キャンプを2軍スタート。大学時代の疲労回復を優先するとしてスロー調整していたが、4月になってトミー・ジョン手術を受けたと発表があった。
中日のドラフト1位・草加勝は、新人合同自主トレ中に右肘の違和感を訴え、こちらもトミー・ジョン手術を受けることになった。
ドラフト上位選手は即戦力として期待されており、自主トレや春季キャンプからの離脱は、チームにとって想定外。西武・斎藤の「痛み止め発言」は「聞いてないよ」と言いたくなるショッキングな事実だが、斎藤がドラフト上位指名を狙うために肩の違和感を隠していたとしたら、スカウトの眼力が疑われるところだ。
では契約前にメディカルチェックをすればいいではないか、と思うが、日本ではドラフト候補選手が事前にメディカルチェックを受けるシステムはない。各チームともスカウトには徹底的な調査を依頼しているというが、選手が隠していたら、なかなか見抜くことは難しいという。ならばチェック制度を導入すればいい。
期待の選手が入団後、すぐにトミー・ジョン手術では、どうにも「騙された感」が蔓延することになる。メジャーリーグでは前年度のドラフトで、3巡目までの上位指名選手と契約できなかったチームは、その選手の全体指名順位に1を加えた順位での指名権が、追加で与えられる制度がある。
こんなことでは今後、日本でもなんらかの保証制度が必要になってくるかもしれない。
(ケン高田)