沖縄での雄姿を楽しみにしていたファンから、一斉にため息が漏れた。
NBAレイカーズの八村塁が自身の制限付きフリーエージェントの立場を重視して、8月25日に開幕する男子バスケットボールW杯の欠場を決めた。八村自身、苦渋の決断だったと明かしているのだが、ファンへの謝罪とともに、代表チームのトム・ホーバスHC(ヘッドコーチ)の了承を得られたことに、感謝の意を述べている。バスケットボールを取材するスポーツライターが内情を語る。
「NBAのどこのチームでもファーストオプション、つまり『プランA』に数えられる選手なら、悩む必要はないでしょう。しかし、いわゆる『プランB』以下、八村選手などの、まだこれから確固たる地位を築いていかなければならない選手には、フリーエージェントでどこのチームが獲得してくれるかは、その後のバスケ人生を占う上で、とても重要。W杯出場のために帰国していると、その真っ最中に来季の命運が決まる展開になりかねません。万が一、W杯やその準備中にケガでもしようものなら、他の選手にその座を奪われますからね。八村選手の決断はNBAやバスケットボールに詳しい熱烈ファンはすでに予測していましたから、ほとんどが『支持します』という声ですね。一方で八村選手が出場すると見込んで、決して安くないチケット(日本戦のカテゴリー1は3万5000円)や開催地・沖縄への航空券を思い切って買ってしまったファンからは『今すぐ返金してくれ』という声も上がりました」(スポーツライター)
事情知ったるバスケットファンの擁護が目立つ中で、切実な声を拾ってみれば「日本のエースが自国開催で無責任」「パリ五輪の予選に出られない可能性があるのに…」「W杯ってそんなに大した大会じゃないんですね」などなど。先のスポーツライターが言う。
「W杯で好成績を収めると、翌年のパリ五輪の出場も決まります。その可能性が低くなったと嘆く声が聞こえるのは、当然のことかもしれません。それも含めて、アメリカが中心となっているスポーツの国際大会への不満の声が、膨れ上がってますね」
日本でも人気が高いスポーツの国際大会としては、サッカーW杯が筆頭だろう。それに続くのは、2019年の日本大会が盛り上がったラグビーW杯。両者は各国がベストメンバーで戦うことで、圧倒的に盛り上がる。
一方で、野球のWBCとバスケットボールW杯はともに、アメリカが中心の競技。この2つの国際大会は、一流選手が所属チームの都合で回避するのが当たり前だ。だから今回の八村の欠場で「アメリカふざけんな!」となってしまうわけなのである。八村を擁護する中にも、この「まずアメリカありき」の状況に不満を示す声は少なくない。
「大谷翔平が出場できた今年のWBCは奇跡でした。それでもヤンキースからは出場選手ゼロ、メッツの千賀滉大も、チームの意向があって出場できませんでした。アメリカ中心のスポーツには、いろんな壁があります。男子バスケット日本代表にとって、八村選手は大谷選手とダルビッシュ有投手と吉田正尚選手の3人分ぐらいの意味がありましたから、事情はわかれど不満を言いたくなるファンが多いのも頷けます」(前出・スポーツライター)
フランス代表でも、ドラフト一巡目のビクター・ウェンバンヤマ選手が、W杯欠場を発表。自国ファンの批判を交わすのに、四苦八苦しているという。
こうなったら、同じくNBAの渡辺雄太やBリーグの精鋭たちで、八村不在を忘れさせるほど、日本中を熱狂させてもらいたい。
(飯野さつき)