今週は東西でクラシックトライアルが行われる。中山の皐月賞TR「弥生賞」、阪神の桜花賞TR「チューリップ賞」とも比較的堅めの傾向ながら、今年はいずれも傑出馬不在の混戦模様。波乱含みの戦いになりそうだ。
寒さがやわらいだと思ったら、もう桜花賞、皐月賞のトライアルレースがやってきた。競馬に携わっていると時の進むのが早いように感じられるが、クラシックレースの到来を今か今かと待っているこの時期のワクワク感は、競馬ファンにとってたまらないものがある。
この弥生賞を勝って大きく羽ばたいた馬は枚挙にいとまがない。近いところでは、ロジユニヴァース(09年)、ヴィクトワールピサ(10年)、そしてディープインパクト(05年)、アドマイヤムーン(06年)、ちょっと離れたところでダンスインザダーク(96年)、スペシャルウィーク(98年)が思い出されるが、この弥生賞は単にクラシックを占う重要な一戦であるだけでなく、競走馬にとっては“出世レース”と言っていいかもしれない。
昨年の優勝馬トゥザワールドは、本番の皐月賞で2着。ダービー(5着)、菊花賞(16着)は期待を裏切って評価を下げたが、有馬記念ではジェンティルドンナの2着に頑張り、今年の活躍が期待されている。2着だったワンアンドオンリーは、ご承知のとおりダービー馬となり、ドバイ遠征が決まっている。
という具合にファン必見の一戦だからだろう、馬券的なうまみは、あまり期待できない(馬単導入後の03年以降、馬単での万馬券はわずか1回。1番人気7勝、2番人気3勝)。
今年は、どうだろう。私見だが、2週後に行われるスプリングSのほうが、同じ皐月賞トライアルでも評判馬がそろっているように思われる。それだけに、人気どおり簡単に決まらないのではないだろうか。
クラリティスカイ、サトノクラウン、シャイニングレイ、そしてブライトエンブレム、ベルラップといった人気どころは、いずれも2カ月以上実戦から離れている。獲得賞金から皐月賞の出走権は得ており、多少余裕残しの状態ではないかと察せられる。
なら3着まで(優先出走権が得られる)に入らなければ、本番挑戦への夢が絶たれる馬に目を向けるべきではないか。
穴党としての狙いは、そんな1頭であるタケルラムセスだ。
新馬─特別と連勝。その勢いでGIII京成杯に挑戦したが、キャリア不足が露呈した格好で9着に敗れた。が、出遅れたうえに、直線で前をカットされる不利がありながら、勝ち馬とコンマ4秒差なら評価されていい。中1週のローテーションだったこともあり、パドックでは落ち着きを欠いてもいた。
「まだ体に緩さがあり、中身ができれば楽しみな馬」
とは、前走で手綱を取った横山典騎手の弁だった。
が、おもしろいもので、この時期、明け3歳馬の変わり身、成長度は驚くほど早い。前走から1カ月。大幅な良化ぶりをうかがわせているのだ。2週前の追い切りの動きは厩舎関係者の予想をはるかに上回るもので、併せたパートナーを問題にせず、好時計をはじき出した。
「力まずに走るようになった。フットワークが伸びやかになったし、馬体がしっかりした」
と、田村調教師は一変ぶりを強調するほどだ。1週前の追い切りでも新コンビを組む蛯名騎手を背に軽快かつリズミカルな動きを披露していた。ならば期待していいのではないか。
母ヒシピナクルは、GIIローズSの勝ち馬で、伯母は女傑の名をほしいままにしたヒシアマゾン。そしてアドマイヤムーン(ジャパンCなどGI3勝)、スリープレスナイト(スプリンターズS)が近親にいる良血。大きく狙ってみたい。
◆アサヒ芸能3/3発売(3/12号)より