野球人口の減少というのが嘘ではないかと思うほど、近年のプロ野球キャンプ人気はかなりのものだ。ファンにとっては、シーズン中には見られない選手や監督の姿を間近で確認でき、移動時にサインをもらうのも目的のひとつになっている。
チームによってはキャンプ限定グッズを販売する場合もあり、お目当ての選手のレアグッズを求めて、全国から大勢のファンが訪れる。中日は沖縄キャンプ限定のユニフォームが大人気で、キャンプ初日の売り上げが前年の約1.8倍を記録。2023年の1億5000万円を超えるのは確実だろう。
一方で、長年にわたり問題視されているのが、「サイン転売ヤー」の悪行である。広島の日南キャンプでは、転売ヤーとみられる人物が球場の出入り口やブルペン付近など、選手からサインをもらいやすい場所に手荷物を置きっぱなしにし、最前列を独占する「場所取り」が行われている。
現地での目撃情報によると、どうやら複数人がチームになって、サインをもらえそうな状況になると荷物を置いたまま移動を繰り返している。球団側はそうした行為が行われているのは承知済みで「これより20分放置する場合は、荷物を回収します」という貼り紙で対策を講じたが、すぐに破り捨てられてしまうのだと。
振り返れば2019年の日南キャンプ初日には、長野久義がファンの顔ひとりひとりを見ながらサイン。2回以上もらおうとすると「さっき書いたよね」と断り、列を乱すファンには「押したら止めるよ」と注意。素晴らしいファン対応は「さすが長野!」と称賛された。
不届き者はごく一部と信じたいが、広島では1月に入団記者会見を開いた新外国人ドミンゲス、モンテロ、ファビアンの直筆サインボールが、会見直後に「メルカリ」に出品されている。
そもそも転売目的でサインをもらうのは、選手に失礼だ。中日の沖縄限定グッズもすでにフリマアプリに出品されていることが確認されており、ファンの怒りを買っている。
一部の不届き者のせいで今後、球団から「サイン禁止令」が出る可能性があるかもしれない。そうなれば、ルールを守ってキャンプを楽しんでいるファンにとっては、とんだ迷惑だ。
(ケン高田)