ササンオールスターズと大谷翔平が「タッグ」を組んだ「ユニクロ」CMソング「夢の宇宙」を聞いた人はいるだろう。この曲はサザンオールスターズの新曲で、歌詞中にあの大谷のフルネームが使われているのだ。作詞・作曲した桑田佳祐はラジオ番組で、
「日本の三流バンドに『私の名前を勝手に使って商売されても困るんですけど。即刻、歌詞変えるか、いくらいくら支払ってもらえますか』とか言われたらどうしよ~」
と使用許可を得るまでの胸中を語っていたが、無事に大谷の了承を得られたのだ。3月19日にリリースされる10年ぶり16枚目のアルバム「THANK YOU SO MUCH」に収録されるという。
吉田拓郎、ジョン・レノン、ローウェル・ジョージ…桑田は自身がリスペクトする先人の楽曲を採用しているが、他にもスポーツ界のスーパースターを数多く題材としている。音楽ライターが語る。
「最も有名なのは、長嶋茂雄。10年前のアルバム『ピースとハイライト』の『栄光の男』はかつて、桑田が学生時代に引退試合を喫茶店で見た経験から、敬愛する長嶋さん賛歌となっています。また、毎週ボウリング場に通うほどのボウリング好きで、ソロ曲『レッツゴーボウリング』では、中山律子をリスペクトする曲を歌い上げています」
野球、ボウリングのほかに、桑田がこよなく愛するのはプロレスだ。
「サザンのライブでは、桑田はアントニオ猪木を真似して『1・2・3、ダァー!』で締めるほど。映画『浅草キッド』の主題歌にもなった『Soulコブラツイスト~魂の悶絶』では、猪木の十八番のプロレス技がタイトルで使われています。『太陽は罪な奴』のMVにはなんと、猪木本人が登場し、桑田と掛け合いをしている。他にもマニアックなところでは『ゆけ!!力道山』という曲もあるほど、プロレスの影響は枚挙にいとまなしです」(前出・音楽ライター)
惚れ抜いた人物は歌に昇華させる。それが桑田の真骨頂だろう。
気になるのは「夢の宇宙」で大谷の前に登場するイギー・ポップ。大谷がアメリカのロック・スターと並列されたのはなぜか。レコード会社幹部が解説する。
「確かにジョン・レノンやポール・マッカートニなど、ビートルズ好きを公言する桑田がパンクのゴッドファーザーと称されるイギーの名前を挙げるのは、意外な気がします。ただ、世代的にはビートルズの少し後、デビッド・ボウイなどに影響を受けている。その意味で、2016年に他界したボウイとも親交が深いイギーの名前を、歌詞に取り入れたのでしょう。大谷の名前に関しては、桑田本人が『降りてきた』と独特な表現をしていますので、本当の理由はわかりませんが…。今なお現役で活躍するロックスターと二刀流の球界スーパースターを列挙することで、異次元のエネルギーを産出しようとしたのかもしれません」
78歳の御大イギーは18年ぶりの単独来日が3月に決定している。奇しくも全国ツアー中のサザンと、奇跡の合体はあるか。