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大谷翔平「左肩関節手術」でわかった「深刻症状」と「二刀流復帰」までの新たな道のり

 二刀流復帰は早くても来秋以降か。

 ワールドシリーズ第2戦で盗塁を試みた際に左肩を亜脱臼した大谷翔平についてドジャースは、関節鏡視下手術を受けて成功したと発表した。主治医は昨年の右肘ハイブリッド手術を執刀した、球団専属で「カーラン・ジョーブ・クリニック」のニール・エラトロッシュ医師だ。

 アメリカのテレビドラマには「いいニュースと悪いニュース、どっちから聞きたい?」というお決まりのセリフがあるが、「大谷の手術」はまさにソレ。手術成功が朗報である一方、日本のファンが想像していたより「かなり深刻な負傷」だったことがわかったからだ。

 大谷は肩関節が外れかけた亜脱臼などではなく、肩関節を保護する「関節唇」を損傷していた。

「関節唇」とは、肩と上腕をつなぐ肩関節の肩側の凹部分を保護する「パッキン」の役割を果たしている、薄い軟骨組織のことだ。

 水道のゴムパッキンをイメージしてほしいが、ゴムパッキンが擦り切れたら水が漏れ出す上に、部品の接合部も傷んでしまう。大谷の関節唇損傷はまさにそんな状態で、ワールドシリーズ第3戦以降は想像を絶する激痛との戦いだったことが伺える。

 それでもメジャー最高峰のヤンキース先発陣に「圧」をかけるため、1番DHで打席に立つことを決めたのだろう。

 治療法は軽傷なら鎮痛剤の投与と安静で様子を見るが、関節唇の損傷が激しかったり断裂している場合は、関節鏡下の修復手術が必要となる。肩関節脱臼で最悪なのは、肩が外れかかった衝撃で関節唇が損傷した上に、上腕側の凸部分の骨折を伴うケース。この場合、関節唇修復だけでなく、上腕側の骨折部位にビスを打たねばならず、復帰までに半年以上を要する。

 ド軍のブランドン・ゴームズGMは現地時間11月6日(日本時間7日)、大谷の手術について、

「術後の経過は良好。来春のキャンプには間に合うだろう。彼が最善の状態で進むための方法だった」

 とMLB公式サイトを通じて説明していることから、最悪のケースは免れたと推測できる。

 それでも関節鏡下による修復手術は一般的に、術後2週間から3週間はサポーターなどで肩関節を完全固定。術後1カ月から肩関節を動かすリハビリを開始し、日常生活の動作ができるようになるまでに数カ月がかかる。

 オフシーズンとはいえ、野球小僧の大谷をもってしても、年内いっぱいは「二刀流」復活のための激しいトレーニングは絶望的。ゴームズGMも大谷の具体的な復帰時期と来季の登板可能性については、言葉を濁した。

 救いは新妻・真美子夫人の存在だ。「関節唇損傷」は野球のほか、腕を挙上するプレーの多いバレーボールやバスケットボールの選手に多いケガ。元バスケットボール女子日本代表だった真美子夫人なら、手術後の生活でやっていいこと、悪いこと、そしてリハビリを熟知している。

 結婚を発表して初めて2人で迎えるオフシーズン。大谷に寄り添い、左腕の代わりとなって、献身的に支えてくれることだろう。

(那須優子/医療ジャーナリスト)

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