やっぱり「ついてない男」なのか。藤浪晋太郎の不運がクローズアップされている。
プロ野球12球団は春季キャンプ真っただ中にあるが、今季から巨人でプレーする田中将大の動向は気になるところだ。久保康生巡回コーチの指導で、軸足が体重移動時に沈み込んでしまうクセや、横回転だったフォームを縦回転に改造することに挑戦。本人は復活への手応えを感じ取っているが、そこで名前が挙がっているのが、マリナーズとマイナー契約を結んだ藤浪晋太郎だ。マリナーズの春季キャンプには招待選手として参加するが、メジャー昇格を勝ち取れるかは疑問だ。スポーツ紙遊軍記者が語る。
「久保コーチは昨年、菅野智之を再生させました。さらに田中を復活させれば、『魔改造』と呼ばれる手腕の評価はさらに上がるでしょう。これまでも近鉄、阪神、ソフトバンクで数多くの選手を育ててきた実績の持ち主ですが、藤浪を再生できなかったと揶揄する声があるのも事実です」
久保コーチは2005年から2011年、2013年から2017年までの計13年間も、阪神にコーチとして在籍。藤川球児監督や能見篤史、安藤優也、福原忍や岩崎優らを世に送り出してきた。その久保コーチが心残りにしているのが、藤浪だというのだ。入団5年目の2017年シーズン途中から極度の不振に陥っていた藤浪の再生に、コーチ人生を懸けて臨もうとしていたのだ。ところが球団フロントから、ストップがかかる。当時を知るスポーツ紙デスクが明かす。
「久保コーチは基礎から徹底し、藤浪を再生させるつもりで計画していたんです。ところがフロントからは、育成コーチだった福原に託せという指令が出た。それが結果的にうまくいかなかったのは、現在を見れば明らか。福原コーチだけの責任ではありませんが、もし久保コーチが指導していれば、どうなっていたかはわかりません」
久保コーチはその年を最後に阪神を退団したが、
「藤浪は自動車にたとえれば、フェラーリのような存在。これを操るには安定した精神、繊細な技術やスタッフのサポートが必要になる。だからこそ、原理原則を基本とした、簡素化された投球フォームを」
と気にかけてきた。捕手に向かって真っ直ぐに踏み込んで投げるフォームを身につけるため、平均台を使った投球練習の必要性を提唱したこともある。どんな名伯楽でも万人にフィットするわけではないが、「魔改造」を施した藤浪の投球を、ぜひ見たかったと思う。
(阿部勝彦)