石破茂首相が得意の絶頂だ。心配していたトランプ米大統領との首脳会談が無事に終わり、与党だけでなく野党からも評価されているからだ。2月9日は長旅の疲れも見せずにNHK、日経新聞、読売新聞、日本テレビとインタビューを掛け持ちした。
NHKの番組ではトランプ大統領との会談を振り返り、
「相性は合うと思う。これから先、落ち着いてじっくり話ができる印象を持った。テレビで見ていた印象とは異なり、こちらの主張を途中で遮ることなく、じっくり話を聞いてもらった」
と自信をのぞかせた。
もっとも、石破首相も認めたように、今回の会談は「大勢の方に努力いただき、いい結果となった」といえる。トランプ大統領の関心がウクライナ情勢やガザ情勢、そしてメキシコやカナダとの対立に向いており、日本に何かを言う余裕はなかったのも幸いした。
日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収についても、「買収ではなく投資」としてトランプ大統領を引き寄せたのはいいが、大統領はあくまで買収は認めない姿勢を鮮明にしている。
トランプ大統領からもらったツーショット写真の横には大統領の直筆で、石破氏の名前ではなく「Mr.PM」と記されていた。しかも「あなたは人々の偉大な総理大臣になるでしょう」と現在形ではなく、未来形になっている。まだトランプ大統領から認知されていないということだろう。
「現実は少数与党に変わりはない。自民党支持層の不満が溜まっており、あまり有頂天になると落とし穴があるだろう」(閣僚経験者)
との冷ややかな声もあるのだ。
(田中紘二/政治ジャーナリスト)