小笠原慎之介は先発ローテーションの「最後の1枠」を勝ち取ることができるのか。ワシントン・ナショナルズに移籍した小笠原が実戦形式の打撃練習に登板した。計31球、打者6人と対戦したが、ヒット性の当たりはゼロ。デーブ・マルティネス監督は、
「速球を投げる時と同じように見える」
と、チェンジアップを褒めていた。しかし地元紙「フェデラル・ベースボール」など複数のメディアは「ロングリリーフに回るのではないか」と予想する。現地記者が解説する。
「ナショナルズは5年連続で勝率5割を割っていますが、若い投手が育っています。先発投手5人枠の『最後の1人』をDJハーツ、ミッチェル・パーカー、ケード・キャバリなどの若手と争う図式です」
小笠原は上半身を二塁方向に少し捻るような投球フォームに改良していた。メジャーリーグ挑戦の準備を進めていたのだろう。ボールが威力を増し、高くて硬いメジャーリーグのマウンドに対応するために考えたそうだ。しかし「慣れる」という意味では、捕手の役目についても考えを改めたほうがよさそうである。ナショナルズのキーバート・ルイーズは、打撃力で正捕手の座を掴んだタイプ。2023年の盗塁阻止率は1割を切っており、昨年はようやく1割台になった。
加えてボールブロッキング、フレーミングの技術力は平均値以下。それでも2023年開幕前に8年総額5000万ドル(約70億円)の大型契約を結んだくらいだから、ナショナルズは大きな期待をかけているのだろう。
「スイッチヒッターで、ホームランは2023年の18本が今のところの最高数値です。まだ26歳と若く、打率、打点は『これから』ですが、将来的には4番を任せたいと期待されていますね」(前出・現地記者)
つまりディフェンス面で「大きなマイナス」が続いても、スタメン落ちすることはない選手。そうなると小笠原は「ディフェンス面で捕手からの援護はもらえない」くらいに考えなければならない。
二塁方向に少し捻る新投球フォームは、球持ちが長くなった分、走者をさらに走らせる一因になる。新天地では得点圏に盗塁されても、気持ちを切り替えなければ先発投手は務まらないようだ。
(飯山満/スポーツライター)