「許されざる者たち」島田洋一/1089円・Haneda新書
長引く円安で日本の衰退が止まらない。その要因として日本保守党の島田洋一議員は「利権を得るために国を売る許されざる者たちがいる」と断言する。外交、財政、石破総理など、今、日本が抱えている様々な問題点とは─。
名越 発売して間もなく重版が決まったそうですね。刊行が24年末ということですから、衆議院選挙中の執筆は、大変だったのではありませんか。
島田 正直、初めての議員活動との両立は大変でしたが、内容はしっかり充実させたつもりです。
名越 拉致問題から環境エネルギー、外務省、学術会議など日本が抱える問題を本書で鋭く指摘しています。しかも、その原因を作っている現役政治家や著名人を実名でぶった切っているのが何とも痛快でした。
島田 「うちの先生の名前が出ていなくてホッとしました」と言っている自民党の議員秘書もいるようです。
名越 現役の代議士が実名で告発する点に、島田さんの覚悟と、このままではマズイという危機感の大きさを感じました。
島田 残念ながら、この数十年、日本の国力は低下しています。その原因の一つは、本書で最初に取り上げた河野太郎氏のようなリベラルです。私は“うすら左翼”と呼んでいますが、こうした人物が政治の中枢にいるのは大問題です。まずはその事実を広く知ってほしかった。その上で状況を変え、日本のあるべき道を示すために執筆しました。
名越 国を弱体化させる要因の一つに財政の問題があります。外務省は国際機関にムダなお金を出しすぎです。
島田 国際機関に金を出すほど、官僚の天下りポジション確保に繫がるからです。外務省に限らず、中央官庁の役人の多くは権限拡大、利権拡大しか考えていない。本来は政治家が掣せい肘ちゅうすべきですが、むしろ「共犯者」になっています。
名越 外務省は公表していませんが、スタッフを2割増やすことを決めたと聞きました。在外公館も増えていて、今は235カ所になっています。例えばハバロフスクは在留邦人が2人なのに、総領事館には10人の日本人スタッフがいます。
島田 明らかにバランスを失した税金の使い方です。
名越 税金といえば、軍事関連の研究を否定する日本学術会議のあり方も追及しています。
島田 もともと日本学術会議は、GHQ(連合国最高司令官総司令部)が日本を弱体化させるために作った組織です。だから軍事に関する研究を否定する。そういうことを主張する自称学者たちがいるのは自由ですが、問題は税金が投入されることにあります。
名越 菅義偉総理の時に、会員の任命拒否をして批判されたこともありました。
島田 拒否された6人はいずれも安倍総理が進めた新安保法制に強く反対した人々です。それでも任命しろとは甘すぎるでしょう。ところが今、政府が用意している法案では、総理大臣の拒否権をなくしながら税金投入は続けるという、紛れもない改悪です。しかもあの組織は、軍事研究を否定しながら中国の軍事関連機関とは交流を持っている。矛盾もいいところです。
ゲスト:島田洋一(しまだ・よういち)1957年、大阪府生まれ。京都大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程修了後、京大法学部助手、文部省教科書調査官を経て、03年、福井県立大学教授。23年より名誉教授。24年10月の第50回衆議院議員総選挙で日本保守党から出馬し当選。同党政調会長、拉致問題対策本部長を務める。
聞き手:名越健郎(なごし・けんろう)拓殖大学特任教授。1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社。モスクワ支局長、ワシントン支局長、外信部長などを経て退職。拓殖大学海外事情研究所教授を経て現職。ロシアに精通し、ロシア政治ウオッチャーとして活躍する。著書に「独裁者プーチン」(文春新書)など。