名越 夏の参議院選挙で自民党が大敗した際は「林官房長官を党首に」という意見もあると聞きました。
島田 石破総理を推した層の声ですね。でも林氏は、石破氏以上に立ち居振る舞いが問題ですね。本会議で私の席から大臣席の林氏がよく見えますが、口を押さえもせず、大あくびを繰り返している。緊張感がなさすぎます。しかも林氏は、日中友好議連の会長を長年務めてきた。アメリカ政府はこの組織を「中国共産党による対日工作の窓口」と認識しています。当然、不信の目で見られます。彼に日本のリーダーは任せられません。
名越 保守勢力で相変わらず元気なのは、高市衆議院議員くらいでしょうか。
島田 安倍元総理は、トランプ再登板に合わせて自分の復帰を考えていたでしょう。その後は萩生田議員に繫いで、さらには木原稔議員あたりにバトンを渡す構想だった。ところが不慮の死を遂げ、萩生田氏は政治資金問題で後退を余儀なくされた。そんな中、保守のホープとして手を挙げろと木原氏に言ったことがありますが「タイミングを見て」とかなり慎重です。早く勝負すべきでしょう。
名越 前回の衆院選では、日本保守党が3議席を確保し、国民民主党が躍進しました。これは自民党がリベラル化していることが影響したとも言えますね。
島田 はい。国民民主は減税以外はリベラルですが、保守党はアメリカのトランプ共和党に近い本格的な保守政党だと自負しています。我々が総選挙で議席を得たのは、安倍氏を支持していた理念的保守層が、自民党に呆れ、離れた結果でしょう。加えて、いわゆる裏金問題で処分を繰り返し、安倍氏に近かった議員ほど不利な選挙戦を強いられた。要は自滅です。
名越 保守を代表する日本保守党にとって、夏の参院選は正念場とも言えますが、どう闘う予定ですか。
島田 国民民主党は家族別姓やLGBTに関してはリベラルですが、昨秋の総選挙で議席を4倍に増やしました。「手取りを増やす」というスローガンを「103万円の壁」といった具体的政策で裏打ちした結果でしょう。やはり理念に加え「所得を増やす」です。
名越 具体的には?
島田 ガソリン減税、消費減税など減税と規制改革による経済活性化です。「国を豊かにする」という党の理念をわかりやすく政策化することで、有権者の信頼を得たいと考えています。
名越 トランプ氏が勝利したやり方ですね。
島田 確かに保守党代表の百田尚樹氏はトランプ氏にかなり似ています。どちらも歯に衣着せぬ本格保守で、1日に3回は失言暴言が問題になる(笑)。百田氏はベストセラー作家で、トランプ氏同様、「現場の経済」がわかっています。減税と規制改革を通じた経済活性化は、河村たかし議員が名古屋市長時代に成功させた実績があります。国際政治分析では私の右に出る議員がいるとは思えません(笑)。このあたりは我々の大きな強みでしょう。
名越 誰が日本を弱体化させているのか。島田さんたちが本気で日本を豊かで強い国にしたいと願っていることが多くの人に伝わるといいですね。
島田 参院選で同志を増やしたいと思います。
ゲスト:島田洋一(しまだ・よういち)1957年、大阪府生まれ。京都大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程修了後、京大法学部助手、文部省教科書調査官を経て、03年、福井県立大学教授。23年より名誉教授。24年10月の第50回衆議院議員総選挙で日本保守党から出馬し当選。同党政調会長、拉致問題対策本部長を務める。
聞き手:名越健郎(なごし・けんろう)拓殖大学特任教授。1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社。モスクワ支局長、ワシントン支局長、外信部長などを経て退職。拓殖大学海外事情研究所教授を経て現職。ロシアに精通し、ロシア政治ウオッチャーとして活躍する。著書に「独裁者プーチン」(文春新書)など。