【相談】
安心できる保管場所として銀行の貸金庫を利用しています。会社の権利書のほか、プライベートな貴金属なども預けることができたので大変重宝していました。ところが、この度の貸金庫窃盗事件ですっかり信用できなくなりました。とはいえ、昨今は闇バイトによる強盗なども横行し、日本の治安はよくありません。貴重品の管理はどうすべきでしょうか?(65歳・工場経営者)
【回答】
貸金庫を狙った金庫泥棒の犯人が「銀行員だった」この事件は驚愕でした。これは普通ではなかなか想定できない特殊なケースです。銀行に預けていたものが盗まれてしまったのですから。
基本的に貸金庫は、契約証書や権利書、貴金属などを預けておくところで、現金は預けられないルールになっています。ところが、それを守らない人が結構いるわけです。この手の犯罪を防止するには、そのあたりのルールの徹底も必要になるでしょう。
「貴重品はどこに預ければいいんだ」と、あなたが不安になる気持ちも当然です。対策としては、銀行が信用できないのなら、自宅で保管するしか今のところありません。
しかし、そうは言ってもこれもそう安心できるものではありません。自宅に大金などを置いておけば、昨今は闇バイトによる強盗の標的になってしまうかもしれません。
ここで、ふと思い出したのが、江戸川乱歩の作品です。怪人二十面相に狙われた金品を守るために、あえてゴミ箱に隠すのです。二十面相も、まさかそんなところに隠してあるとは考えもしませんから、高価なものが入っていそうな金庫などを探した挙句、結局あきらめて何も盗らずに帰っていくという話がありました。
これを応用して、もし強盗に入られて「金を出せ」と言われたら、「はい」と言ってすぐに開けられる金庫を用意しておくわけです。その金庫に10万〜20万など、盗られても困らない金額を入れておき、本当に盗られたくないものは別の場所に隠しておくのです。
この場合、リアリティを出すために金庫はちゃんとしたものを用意しておいたほうがいいでしょう。金庫は安いものもありますが、あえて20万〜30万などの、いかにも高級そうに見える金庫を買ったほうがいいかもしれません。
ギャングなどが多い国や地域へたびたび出張するサラリーマンは、ポケットに2000〜3000円ぐらいの〝見せ金〞を忍ばせ、強盗に襲われたらそれをサッと出すということもよくやっているそうです。まあ、そのぐらいの金額で命が助かるのなら安いものです。
少し話はそれますが、マルサ(国税局査察部)と脱税者の攻防をコミカルに描いた伊丹十三監督の映画「マルサの女」(87年、東宝)では、脱税者は、台所の流しの下とか口紅の中など、あらゆるところに現金や金庫の鍵、印鑑などを隠していました。
確かに日本もどんどん物騒になっているような気がします。昭和の時代と比べて、SNSを使用した事件も多発しています。アメリカをはじめ、海外では「安全はお金を出して買う」と言われています。残念ですが日本もそうなりつつあるように思います。