猫が「おやっ」と思う変な仕草や行動をとることがある。猫にとっては普通のことなのだが、飼い始めて気が付く人は意外と多い。
かつて我が家で飼っていたジュテはマーキングが気になったが、それ以外ではとても真っ当で、変わったところがない猫だった。ところがその後、ガトー、クールボーイ、そうせきの3匹を見ているうちに「何やってんの?」と思う仕草をよく見かけるのだ。
ひとつは「もみもみ」。この冬、睡眠時の寒さ対策にために、量販店でキルティング製「カバーなし掛け布団」を購入した。ポリエステル100%だ。使ってみてそれほど暖かい感じはしないが、一番の特徴は、とてもフワフワした感触があること。これがガトーの大のお気に入りとなった。
仕事部屋に置いている小さなベッドでこれを使っていたら、いつもは寝室のベッドを横取りして寝ていることが多いのに、仕事部屋にやってきて寝る日が圧倒的に増えた。そして時々、ピンクの肉球の小さなモミジのような前足をグーパー、グーパーしている。この仕草を猫用の小さなベッドのフワフワな部分でやっていることがあったが、仕事部屋で寝るようになってからは、新しい布団で頻繁にやるようになった。
どうして、もみもみするのか。これは子猫が母猫のおっぱいを飲む時に胸を触る時の行為なのだという。お乳が出やすいように、子猫が胸を揉むということらしい。ガトーは今年で9歳、人間なら40代。大きな体の割に母親に甘えた遠い日の記憶が鮮明にあり、布団のフワフワした感触から本能的に思い出しているのだろう。専門的用語では「ウールサッキング」というらしい。
これはそうせきがたまにやるが、クールボーイがやっているのを見たことはない。3匹の中ではガトーがいちばん、甘えん坊なのかもしれない。
最近、悩まされているのが、クールボーイとそうせきがやる、床をかく仕草だ。朝のご飯はアイシアの3缶1パックの1缶を3等分している。食べさせた当初は好評だった。ところが、ある時期からささみ入りを食べなくなり、最近はしらす入りを嫌がるようになった。その際、容器の左右にどちらかの手を伸ばし、床をかく仕草をするの。「食べたいのはこれじゃない。違う、違う」ということらしい。
クーもそうせきも床をかきかきした後は、プイッと横を向いて行ってしまう。アイシアの缶詰は、他のメーカーのものと比べてうまそうだ。なのにプイッと拒否する。いつも「贅沢なヤツらめ!」とブツブツ言いながら怒ってしまう。
食いしん坊のガトーも最近はさすがに飽きてきたのか、食いっぷりがよくないが、それでも床をかくことはない。
ちなみに、床をかく仕草にはご飯を隠す、食欲がなくて食べられない、という意味もあるようだ。トイレの時も砂を手でかいて隠そうとするが、その仕草とは明らかに異なる。
最後はガトーがクーの首の後ろを噛み、咥えて、のしかかる行為(写真)。遠くでウーとかギャオとか大きな声がしているので、ビックリして行ってみると、いつもガトーがクーの首の後ろに噛みついている。「やめろ」とガトーを制しても意に介さず、咥えたままクーを引きずり回すことも。クーは苦しがって、さらに大きな声を上げるのだ。
長く続くとさすがに、ガトーの背中をポンポンと叩く。それでガトーの気が散った隙にクーが素早く動き、どうにかして逃げる。これが1日に1回くらいはある。
この行為は交尾の時にもあるが、ガトーとクーの場合、ガトーが自分が兄であり、優位であることをアピールしているものらしい。いわばマウンティングだ。それを知らないで、動物病院に行った時に「ガトーがクーに時々、教育的指導をする」と言ったら笑われてしまった。
しかし不可解なのは、その直後に仲よく寝ていたり、お互いを舐め合ったりしていること。なので、あまりに長引く時以外は、そのまま放置する。そしてガトーが、そうせきにはやらないのもまた、不思議。きかん坊で面倒臭いから、威嚇して怒るくらいに留めている、ということかもしれない。
(峯田淳/コラムニスト)