7月に名古屋で行われる大相撲夏場所で、面白い取り組みが実現するかもしれない。
近畿大学相撲部の浦山が、元横綱・鶴竜が師匠の音羽山部屋への入門会見を行ったのは3月5日だ。83センチ、160キロという恵まれた体格を生かし、主将だった4年時には学生相撲個人体重別選手権で、135キロ級以上の西日本大会で優勝。全国大会でも3位に入るなどして、夏場所では幕下付け出しでのデビューが予定されている。
この幕下付け出しデビューは、2場所連続で7勝0敗の成績を収めれば、関取と呼ばれる地位に昇進できる番付だ。浦山は「1日でも早く関取に」と意欲を見せた。
師匠の音羽山親方は、気性が激しい人物が多いモンゴル出身力士の中にあって、温和で真面目な性格で知られ、後輩力士からは「人格者」と慕われてきた。「日本人より日本人らしい」と、相撲協会内部の受けがよく、横綱昇進時には異論の声がいっさい出なかったほど。それだけに、期待する声は大きいのである。長年、大相撲の取材に携わるベテラン相撲記者は、次のように話す。
「浦山は力士としては当然、期待されていますが、実はそれだけではない。北陸の富山県出身ということで、震災からの復興のシンボルになってほしいという気持ちが、地元にはあるんですよ。本人には重荷になるかもしれませんが、背負うものが大きいだけに、途中で潰れてほしくない。そういう意味では、音羽山部屋に入ったのは正解ですよ」
しかも音羽山部屋に入門したことで、その夏場所では早くも「同郷大物対決」が実現する可能性が出てきた。前出のベテラン相撲記者は、
「それは元大関・朝乃山との対戦が実現するかもしれない、ということです。2人には浅からぬ因縁がありますからね。どちらが勝っても、話題の一番になりますよ」
浦山は朝乃山の富山商業高校時代の恩師で、相撲部監督だった浦山英樹さん(8年前に他界)の長男。子供時代から稽古をつけてもらった、憧れの存在でもある。その朝乃山にデビュー場所で、相撲界でいうところの「恩返し」ができるチャンスがあるのだ。
朝乃山は大ケガのため今場所は三段目まで陥落するが、勝ち越せば夏場所は幕下まで番付を戻す可能性がある。
「となれば話題作りの意味もあり、割り(取組)が組まれる可能性は十分にあるでしょう」(相撲部屋関係者)
6年前の夏場は朝乃山が優勝した。地元・富山が大盛り上がりした記憶が、浦山にはあるという。今度は自分が、という気持ちになって当然。白熱した優勝争いもいいが、番付下位の取組にも大相撲の醍醐味が潜んでいる。