大相撲の元大関・朝乃山が、3月の春場所から復帰する。昨年7月の名古屋場所で左膝前十字靭帯などの重症を負って途中休場。手術を受けた影響もあり、昨年9月の秋場所から3場所連続で全休した。初場所が西幕下41枚目だったことを考えれば、三段目に転落する見通しだが、本人は「心機一転、また頑張りたい。番付を戻していきたい」と意欲を示している。
初場所途中で引退した横綱・照ノ富士も故障の影響で、一時は大関から序二段まで陥落。その後、番付を戻して横綱まで上り詰めただけに、二匹目のドジョウになる可能性はあろうが、朝乃山には相撲を続けなくてはならない事情が取り沙汰されている。スポーツ紙相撲担当記者が語る。
「年寄株の問題が大きいと思いますよ。大関になり、本来ならば名門・高砂部屋を継承するのが規定路線でした。ところがコロナ自粛期間中のキャバクラ問題などで6場所の出場停止処分が下り、三段目に陥落したことで風向きが変わりました。6場所というのは、事実上の引退勧告のようなもの。イメージが悪すぎる。それが引退後にも響いてくる。今のままなら、相撲協会に残るのは大変ですよ」
現在は2014年から導入された、定年退職した年寄の再雇用制度により、一代年寄を除いて105しかない年寄株が不足する傾向にある。そのため襲名条件を満たしていても取得できず、引退するケースが増えているのだ。事実、番付が下がっても相撲を取り続けて、空きが出るのを待つ力士は多い。前出の相撲担当記者は、
「朝乃山は現在、年寄株取得のメドがついていないといいます。大関経験者は引退後3年は、現役時代の四股名のまま相撲協会に残れますが、それ以降は株がなければ退職しなくてはなりません。本来なら師匠の株を継承するか、その師匠に奔走してもらうものですが、今の師匠は先日、部屋を移転したばかりの元関脇・朝赤龍。8代目の高砂親方では、力は借りられない。朝乃山としては相撲を取り続けるしか道はないところでしょう」
一時は横綱に最も近い大関といわれた実力の持ち主。照ノ富士の再来のような快進撃を続けていけば、道は開けるかもしれないが…。