これは「オールドデスト新人王」誕生の期待を抱かせる。オリオールズ・菅野智之である。
フロリダ州サラソタで行われたツインズとのオープン戦に先発登板した菅野は3回を投げて打者9人を完全に抑え込み、5奪三振という圧巻の投球だった。これでオープン戦は3試合連続の無失点。防御率0.00と結果を残し、開幕ローテ入りに当確ランプが灯った。
オープン戦初登板となった2月26日のパイレーツ戦では2回を2安打無失点、2度目の登板となったレッドソックス戦でも2回2安打無失点2奪三振だっただけに、今回の投球内容には菅野本人も試合後、「手応えがあるし、チームとしても手応えを得られる結果となった」と自信をのぞかせている。
菅野が米球界入りする際、日本国内ではその活躍に半信半疑の声が多かった。スポーツ紙遊軍記者が言う。
「確かに2024年は復活したように見えましたが、やはり年齢からくる体力の衰え、NPB球よりも大きく滑りやすいMLB球に適応できないのではないかと、心配する関係者は多かったですからね。現在の好調ぶりは驚きです」
メジャーリーグを取材するスポーツライターも、
「コントロールが命の菅野ですが、MLB球をここまでうまく操れるとは思わなかった。球速はメジャー平均を下回っていますが、いいコースに投げており、打者が差し込まれる球もある。このままなら十分に通用しますよ。オリオールズはアメリカン・リーグ東地区の強豪チームだし、打線の援護が期待できる。シーズン7、8勝。うまくいけば2ケタ勝てるかもしれない。そうなれば変な話ですが、新人王レースに名乗りを上げることになるでしょうね」
過去、日本人メジャーリーガーがMLBの新人王に輝いた例はイチロー、佐々木主浩、そして大谷翔平の3選手となっている。佐々木の受賞年齢は32歳だが、他の2選手は20代だ。過去、メジャーリーガーで最年長受賞者は1950年のサム・ジェスローで当時、33歳だった。現在35歳の菅野がこの賞に輝けば、長いメジャーリーグの歴史に名を残すことになる。前出の遊軍記者は、
「菅野が新人王なんて面白いじゃないですか。日本でプレーするベテラン選手の励みになる。興味深いですよ」
ドジャース・佐々木朗希と菅野でナ・リーグ、ア・リーグの新人王を独占してほしいものだ。
(阿部勝彦)