トランプ大統領の大胆な発言は、何も外交・国外相手に限られたことではない。3月1日には、アメリカの【公用語を英語とする】大統領令に署名。
意外にも、アメリカでは建国以来、「公用語」は決まっていなかった。もちろん多数派が英語を使うという事実はあるが、多民族国家であるアメリカとしてはマイノリティの権利も尊重するという意味合いが強かったのだ。今回、それを多数派の「常識」に合わせたということになる。
この多数派に寄り添うというのは、公用語の話だけではない。LGBTQなどの少数派の権利を尊重する「DEI政策」(多様性・公平性・包括性)の全面的な見直しにも、それは見られた。同様な事例では、大統領就任直後に【性別は男性と女性のみ】という大統領令にも署名している。もちろん、これにも理由がある。
「バイデン政権下で極端にポピュリズムに寄ったマイノリティ政策を見直す、というトランプ大統領の信念でしょう。これは大統領支持者の保守派の価値観とも合致するものなのです」(井上氏)
支持層の保守派の意向に沿う、といった見方もあるが、一方で極端なDEI政策の影響から、スポーツ界のトランスジェンダー参加などが大きな議論を呼んでいたことも事実だ。特に、ここ数年アメリカの大学スポーツ界では、水泳・陸上・バレーボールなどの「女子競技」でトランス選手の無双が際立っており、一部の女性選手からクレームも出ていたのだ。
トランプ大統領は就任前からこれらの状況に懸念を示しており、就任後にトランス女性の女性スポーツへの参加を認めない大統領令に署名。【ロサンゼルスオリンピックでは、男性が女性選手を打ち負かすのを黙って傍観することはない】と言い放った。
もっとも、こうした傍若無人な言動は、時には諸刃の剣となることもある。昨年の大統領選を戦った民主党候補のカマラ・ハリス前副大統領(60)に対して、【インド系だと思っていたが、突然黒人だと言いだして驚いた】というものだ。
これは、ハリス氏がアジア系と黒人系を都合よく使い分けている、という文脈で出た発言だが、いずれにしても黒人に変わりはなく、特にリベラル派からは大きな非難が起こったのだ。とはいえ、こうしたセンシティブな問題でも、ところ構わず暴言を連発し、相手を攪乱するのがトランプ氏の常套手段なのだ。