新人騎手で最初に勝利を挙げたのは、田中博康厩舎所属の18歳・舟山瑠泉(ふなやま・るい)だった。3月8日の中山7Rでレーヴブリリアントに騎乗し、ハナ差で勝利した。1番人気だったので順当な勝利と言えるが、計ったかのように差し切ってみせたのが印象的である。
驚いたのは、翌日の中山1Rで11番人気のピラニアキッスを2着にもってきたこと。ダート替わりが良かったのか、中団から脚を伸ばして勝ち馬に迫ってみせた。直線でムチを入れた際に馬が内にもたれてしまったのは残念だったが、それを除けば言うことのない騎乗ぶりだろう。
その2日後の11日には船橋競馬場で、父親が担当するマーゴットビートに騎乗。1番人気に応えて、逃げ切ってみせた。これ以外にも4鞍に騎乗したが、地方での参戦はまだ終わらない。さらに2日後にも、船橋で5鞍。これにはちょっとビックリだ。
ここまで地方を含めて2勝、2着2回、3着2回、着外14回という成績。デビュー直後にこれだけチャンスを与えられた新人騎手はなかなかいないだろう。
それを可能にしたのが、エージェント・中村剛士氏の力ではないか。大井競馬の元調教助手ということもあって、南関東の競馬関係者とはツーカーの間柄なのだ。戸崎圭太のエージェントも担当しているだけに、有力馬主とのつながりが濃いことは見逃せない。
今週は土曜に中京で5鞍、日曜に中山で2鞍に騎乗する。楽しみなのは中京6R・3歳1勝クラス(ダート1800メートル)のリープアップと、中京12R・4歳上1勝クラス(芝1400メートル)のレッドロスタムだ。
リープアップは牝馬ながら、500キロを超える巨体。1月の中京・新馬(ダート1800メートル)を2番手から抜け出して勝ったレースは、なかなかのものだった。2カ月ぶりとなるが、休養効果は十分で、調教の動きはさらに力強くなった印象だ。52キロの斤量で走れるのも有利だろう。スタートを決めて普通に走ることができれば、勝ち負け必至とみた。
レッドロスタムは2022年秋に東京・新馬(芝1800メートル)を勝利した馬。以降、勝ちきれないでいるが、全15戦中12回で掲示板入りしているように、堅実な走りが取り柄だ。55キロという恵量を生かして、なんとか勝ちたいところ。1400メートルは初めてとなるが、距離短縮がいい方に出ることを期待したい。
新人賞争いは始まったばかりだが、舟山が有利に運んでいきそうである。
(兜志郎/競馬ライター)