世界一の球団・ドジャースが用意するシーズンシナリオは、大谷を主役に据えて描かれている。
計画的にバージョンアップされる25年版の「投手・大谷」は、23年までの投球スタイルとは一線を画すようで、まず手始めに、あの魔球を封印する決意を固めたという。
「投手生命を延命させるには、いかに球数を減らせるかが鍵となります。これまでの主な投球パターンは右打者にはスイーパー、左打者にはスプリットを投げていましたが、いずれも故障リスクが高い。とりわけ、大きく横に曲げるスイーパーは右ヒジに過度な負荷がかかりますからね。目下、3度目のトミー・ジョン手術を回避するためにも、奪三振ではなくツーシームやパワーシンカーやカットボールでゴロアウトを狙う『グラウンドボールピッチャー』への転身に取り組んでいるのです」(在米スポーツライター)
メジャーのマウンドに復帰するのは、6月の予定だ。そこからの投手としての実働を友成氏が分析する。
「17〜19試合の登板数で100イニング前後は堅いと思います。オフにはタナー・スコット(30)を筆頭にリリーフ投手も補強したので、先発した大谷が無理にイニングを稼ぐ必要もありません。球数を減らした効率的な投球が実現できれば、防御率0点台も夢ではない」
「投手・大谷復帰プラン」は付け焼き刃ではなく、球団あげて入念に計画されている。コンディションのピークはレギュラーシーズンではなく、むしろ鬼門となるポストシーズンに向けられているとも言われる。
「4人で編成されるポストシーズンの先発ローテ入りを目指していると考えられます。そもそもドジャースはライバル球団と圧倒的な戦力差があり、100勝以上するのが目に見えています。つまり、地区優勝はほぼ確実と言えます。ただし、昨季こそワールドシリーズを制覇できましたが、22、23年に地区シリーズで敗退するなど、ポストシーズンに弱いのもドジャース。そのイメージを払拭するため、大谷のコンディションを秋までにピークアウトさせるわけにはいかないのです」(友成氏)
一方、スロー調整の投手モードとは正反対に「打者・大谷」は開幕前からフルスロットルで、順調な滑り出しを見せている。
「定位置は1番DH。開幕シリーズまでのオープン戦7試合で打率3割3分3厘、1本塁打、2打点と好調をキープしています。ハイライトはエンゼルス・菊池雄星(33)から先頭打者ホームランを放った3月1日の初陣です。花巻東高の先輩左腕の胸を借り、打者感覚を確認したのでしょう」(スポーツ紙デスク)
昨季は打者専念の「一刀流」でキャリアハイの打率3割1分、54本塁打、130打点、59盗塁を記録。惜しくも三冠王を逃すも、日本人メジャーリーガー初の打率3割、30本塁打、30盗塁のトリプルスリーや、MLB史上初となる50本塁打と50盗塁の「50-50」を達成した。まさに栄耀栄華に酔いしれてもおかしくない偉業だが、「現状維持は後退の始まり」と言わんばかり。打者としても進化を目指し、未踏のタイトル奪取に向けた取り組みがすでに始動していた。
「オープン戦のスイングを見るに、ボールにバックスピンをかけて飛距離を伸ばすよりも、コンタクト力に重きを置いているように感じました。菊池から放ったレフト方向の本塁打も、外角高めの直球を逆らわずにうまく弾き返した『広角打法』。7日のレンジャース戦でも右寄りに守る〝大谷シフト〟の裏をかくようにレフト線のツーベースを放ちました。この『安打製造機モード』と昨季までの『和製大砲モード』を併用させて『首位打者』も狙える仕上がりを見せています」(友成氏)
2年連続3度のMVPを獲ったスーパースターは、常に新たな挑戦を提示して、今季もファンを驚かせてくれるであろう。