ドジャース先発・山本由伸とカブス先発・今永昇太。夢のような日本人投手の競演で始まったメジャーリーグ開幕戦は、本来ならば今永が1番打者の大谷翔平を二塁ゴロに打ち取った後、MVPトリオの一角、ムーキー・ベッツの登場で盛り上がるはずだった…。
試合前会見でロバーツ監督は、ベッツがすでに帰国したと公表。当初は「インフルエンザ様症状」とみられていた。凱旋帰国したカブスの鈴木誠也は「時差ボケが長引いた。やっと時差ボケが治ったと思ったら、もうシカゴに戻らなければならない」と記者団に嘆いており、温暖なロスから3月の「なごり雪」が降る東京への長距離遠征、慣れない食生活で、ベッツも体調を崩したと思われていた。ところが、深刻病状の一端が明らかになったのだ。
アメリカのスポーツメディア「エッセンシャリースポーツ」の報道によると、ベッツが激ヤセ、体調不良を訴えていたのは「東京シリーズ」前の3月上旬からで、
〈ロバーツ監督はベッツを東京に帯同させたことを悔やんでいる〉
と報じたのだ。それによるとロバーツ監督は、次のように語っている。
「こんなに長引くと知っていたら、彼を同行させなかった。もう体調が良くなっていると思っていた。取り返しがつかない」
3月16日の阪神戦後、大谷と山本、佐々木朗希がチームメートに寿司と焼鳥をふるまった「夕食会」には、ベッツも参加。インフルエンザは発症から5日間、ノロウイルスなどの感染性胃腸炎も嘔吐などの症状が治まって7日間は便にウイルスが残り、飛行機移動で他の選手に感染させるおそれがある。出発前にこれらに感染していたならば、ロバーツ監督はベッツの帯同を認めない。よって報道は「感染症以外の深刻病状」を暗示しているともいえる。
身長175センチに対し、体重82キロがベストのベッツが70キロ代前半まで体重を落とし、2週間以上も激ヤセが続くとは、タダごとではない。
ベッツは昨年6月、ロイヤルズ戦でアルタビラ投手の158キロのフォーシームが左手を直撃、長期離脱が予想されたが、8月に復帰した。予想より早い復帰は本人の努力とリハビリ、そして大谷も過去に受けたPRP療法(自己多血小板血漿注入療法)など、回復を早める最先端の再生医療のおかげと推察される。発熱や食欲不振といった深刻病状が、その影響でないことを祈るばかりだ。
(那須優子)