石破茂総理が1年生議員15人に1人10万円の商品券を慰労会の「お土産」として配布していた大問題。報道各社が行った直近の世論調査で内閣支持率が軒並み急落する中、与党内では石破総理に対する非難の声が日増しに高まっている。
中でも怒りを爆発させているのが、今夏の参院選を戦う改選議員だ。改選組の一部からは「石破総理では参院選は戦えない」「このままでは間違いなく大惨敗する」などの厳しい声が噴出し、今年度予算成立後のしかるべきタイミングを見据えた「退陣論」までが、公然と飛び出す事態になっている。
しかし、石破総理が10万円の商品券を「お土産」と強弁するのと同様、与党内で顕現化し始めた「石破降ろし」の動きもまた、国民の感覚からすれば大きくズレている。全国紙ベテラン政治記者が、次のように指摘する。
「国民が怒り呆れているのは、派閥の裏金問題に象徴される自民党の体質そのものです。『総理・総裁をすげ替えれば…』という場当たり的な態度には、政治とカネの問題に真摯に向き合う姿勢が全く感じられない。要するに、眼中にあるのは今夏の参院選だけ。党利党略の根底に見える『自分の議席だけは死守したい』という私利私欲ですよ」
永田町の論理にあぐらをかいている点では、野党も同じだ。口では「総理辞任に値する行為」「出処進退が問われている」などと勇ましい批判を展開しているが、その裏側には「石破総理のままでいてくれた方が、参院選は戦いやすい」とのホンネがある。事実、立憲民主党の野田佳彦代表は、3月16日に青森市内で行った講演で、次のように言い放っているのだ。
「徹底して説明を求める。(野党内には)内閣不信任決議案の提出や退陣を求める声があるが、私は簡単に求めない。(与党は)トップを早く代えて、清新なイメージで参院選に臨みたい、衆院を解散したいということだろうが、そうは問屋が卸さない」
「国民無視」で繰り広げられる与野党の醜聞劇場。まさに「永田町の常識」は「世間の非常識」なのである。
(石森巌)