「こんなことで辞めるわけにはいかない」
当選1回の自民朗衆院議員15人に10万円分の商品券を配布した問題で厳しい追及を受ける石破茂総理は、自民党内からも退陣を求める声が出ていることについて、こう反論したという。5回目の挑戦でようやくつかんだ総理の座にしがみつきたい意向のようだ。
とはいえ、取り巻く状況は厳しさを増している。問題発覚を受けた報道各社の世論調査で、石破内閣の支持率は軒並み急落した。朝日新聞の調査では、2月調査の40%から26%へと下落。毎日新聞の調査でも、2月の30%から23%に落ちている。一般的に内閣支持率が30%を切る状態を「危険水域に入った」とされ、政権運営が不安定になると言われる。
2011年の東日本大震災後、時の菅直人総理が野党のみならず、民主党内からも退陣要求が出ながら居座り続けたように、石破総理も自民党内からの退陣要求を無視して、来年度予算成立後も政権の座に居続けようとしている。
菅直人政権と異なるのは、石破政権が少数与党であるという点だ。6月の国会会期末には、野党が内閣不信任案を提出することが予想される。立憲民主党はもちろん、国民民主党も賛成するだろうし、来年度予算案に賛成した日本維新の会も参院選をにらみ、不信任案に反対するのは難しい。
仮に不信任案が可決されると、どうなるか。石破総理に残された選択肢は「内閣総辞職」か「衆院の解散・総選挙」しかない。解散に打って出れば参院選と重なるため、公明党がダブル選に反対することが予想される。自民党内からも惨敗必至な衆院選への反対論が圧倒的に強いため、石破内閣の命運は6月に尽きる。いくら石破総理が「こんなことで」と強弁しても、今のままでは延命し続けるのは難しい。
菅直人氏は民主党代議士会で事実上の退陣表明をしてから丸3カ月、居座り続けたが、石破総理も6月の会期末まで3カ月ある。かつてと似たようなケースになるか、それとも5月まで石破政権が続くと党の力が弱体化するとして自民党内の危機感が強まり、新総裁の誕生を望む声が強まるか。
今のところ、退陣を求める自民党内の声は低調であるため、菅直人と同じ道を歩むことになりそうだ。
(田中紘二/政治ジャーナリスト)