またしても2着…。ナムレクレアが悲願のGⅠ初制覇を逃した高松宮記念(中京・芝1200メートル)を制したのは、2番人気のサトノレーヴ(牡6)だった。
両馬の明暗を分けたのは、いったい何だったのか。原因は「偽りの良馬場」とでも呼ぶべき馬場状態にあったと、筆者はみている。
レースの勝ち時計は1分7秒9。GⅠ戦線での勝ち馬や好走馬が顔を揃えた今回のメンバーを考えると、仮に「パンパンの良馬場」でレースが行われていたとすれば、少なくとも1分6秒台前半の勝ちタイムは出ていたはずである。
ところが実際には、GⅠクラスの水準からは2秒近くも遅い走破時計。つまり、レース当日の芝コースは「限りなく稍重に近い良馬場」、さらに言えば「事実上の稍重馬場」だったと推定できる。
この「偽りの良馬場」を味方に激走を演じたのが、勝ったサトノレーヴである。同馬は前走の海外GⅠ・香港スプリント(シャティン・芝1200メートル)で、香港スプリント界の強豪カーインライジングと0秒1差の3着に食い込んだが、今回の馬場はそのシャティンと同じく、スタミナが要求される馬場だったと考えられるのだ。
他方、ナムラクレアはパンパンの良馬場でこそ、その鋭い末脚と決め手を生かせるタイプ。最後のゴール前ではサトノレーヴに肉薄する健闘を見せたものの、「偽りの良馬場」が足かせとなって、能力を全開させることができなかった。結局、重馬場に泣かされて2着に甘んじた昨年と同じ結果になってしまったのである。
今秋に行われるGⅠ・スプリンターズステークス(中山・芝1200メートル)で、両馬が再び相まみえることになるのか…それは現時点ではわからない。しかし正真正銘の良馬場での対戦となれば、今回の着順が入れ替わる可能性は大いにある。
ちなみに、6着に沈んだマッドクール(牡6)も、ナムラクレアとは全く逆の意味で、「偽りの良馬場」に翻弄された1頭だ。重馬場で「2戦負けなし」の実績が如実に示すように、今回の馬場はいかにも「軽すぎた」と言っていい。
(日高次郎/競馬アナリスト)