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〈評判倒れの給料泥棒〉「神のお告げ」引退のグリーンウェルは0本塁打/プロ野球「愛しのトンデモ助っ人」列伝

 メジャーでの実績を引っ提げ、チームの救世主として破格の扱いで入団してきた。ところが蓋を開けてみれば、とんだ一杯食わせ物で‥‥。何度も目にした光景である。

 史上最強の助っ人と言われるランディ・バース(83~88年)のような活躍を期待され、阪神に入団する新外国人打者は「バースの再来」とマスコミに煽られること枚挙に暇なし。だが、これまで再来した試しはない。大の虎党・ダンカンは、推定年俸2億7000万円で入団した、ロブ・ディアー(94年)を振り返る。

「鳴り物入りの入団で、期待大だったよね。春季キャンプ地・安芸の球場には、場外に球が飛んでいかないようレフト外野席のはるか上にわざわざ『ディアーネット』を作った。ところがシーズン前も、後も打てないし、ケガで途中帰国してそのまま退団。せっかくお金をかけて作ったネットが翌年からまったく必要なくなったよ(笑)」

 ちなみにディアーの成績は、70試合で76三振、打率1割5分1厘、本塁打8本。その上をいく阪神の〝黒歴史〟更新が、マイク・グリーンウェル(97年)だ。

 球団の用意した家賃150万円のマンションを「狭い!」とリフォームをさせたり、「牧場の経営が忙しい」という理由でキャンプ中に帰国するなど、やりたい放題だった。

「とにかく阪神史上最悪の助っ人。『ミスターレッドソックス』と言われ、当時最高の推定年俸3億5000万円で入団したけど、ケガをして『(野球を辞めろという)神のお告げ』とバカなことを言って退団したんだからね」(ダンカン)

 たった7試合の出場で6安打。本塁打に至っては快音響かず0本だった。

 開幕戦初打席で巨人・駒田以来の満塁本塁打という鮮烈デビューを果たしたケビン・ミッチェル(95年、ダイエー)もまた副業で頭がいっぱいだったようで、シーズン中に無断帰国を繰り返した。その理由の一つが「経営している美容院とアパートが心配」という、ふざけたものだった。

「開幕戦でこれはやるぞと思わせてからの肩すかし感がすごかったですね。ちなみに、のちのグリーンウェルの代理人はミッチェルと同じでした」(長谷川氏)

 歴史をひもとけば、前評判倒れの先駆者は74年に太平洋クラブライオンズでプレーしたフランク・ハワードだ。

「メジャー通算382本塁打の実績を持ち、鳴り物入りで契約金8万ドルと言われた。1ドル300円の時代で、破格の契約です。公称は2メートル、100キロの巨体でしたが、実際は130キロぐらいあった。開幕戦で右ヒザを故障して、たった3打席で退団。5月に帰国しました。にもかかわらず、翌年には『残りの給料を払え』と裁判沙汰にも‥‥。開幕前から『ハワードは今年、ホームランを何本打つか?』という懸賞企画があったのですが、『0本』で当たった人もいましたね」(猪狩氏)

 シクスト・レスカーノ(87年、大洋)も実績あるメジャーリーガーの来日ということで、〝横浜大洋銀行〟時代のファンの期待を集めた1人。デビュー戦でいきなり3安打を放って片鱗を見せたものの、前年に夫人を看病していたブランクを埋められず「150キロの球でも打てたのに、今は140キロの球が怖くなった」と、5月で早くも退団。

「同年、ヤクルトにはボブ・ホーナーが入団しています。私の高校2年時に大洋ファンの友達と、ホーナー&レスカーノの優劣を競い争っていた。ホーナーは期待通りで、大洋ファンをいじり倒しましたよ(笑)」(長谷川氏)

 球団から用意されたマンションにゴキブリが出ることに耐えられず退団したとされるのは、ドン・マネー(84年、近鉄)である。

「当時の近鉄の人に聞くと『ジェントルマン』という評価なんです。家族を連れて来日し、日本の生活にもチームにも溶け込もうとしていた。実はゴキブリにどうしても耐えられなかったのは奥さんで、家族のために帰国したという話です。ただし藤井寺や日生球場に初めて案内された時は、その汚さから『どうして物置で着替えなければいけないのか』とカルチャーショックを受けたといいます」(長谷川氏)

 日本の環境に馴染むことが先決なのは、いつの時代も同じ。巨人のゲーブ・キャプラー(05年)も受難の憂き目にあった。

「開幕から起用しなければいけない契約だったようで、好調の清水隆行を押しのけてスタメン出場した。他球団にとってはラッキーで、期待された肩も弱いことを露呈した上、日本の野球にも馴染めず低迷しました。日本食もダメで、マクドナルドのハンバーガーしか食べられなかった。ピクルスが苦手で、店頭で『抜いてくれ』と言うも通じず、自分で取り除いて食べる毎日でした。ちなみに、ある選手が『今日も元気だ、タバコで肺がん』との日本語を教えたら、それをブツブツつぶやきながら球場に入ってきたこともあった。当時の山本功児ヘッドに怒られていましたけどね」(球団関係者)

 いつの日からか、高い契約金、年俸で引っ張ってきた外国人選手が活躍しないと「給料泥棒」と呼ばれるようになった。

「広島は90年、ドミニカ共和国にカープアカデミーを設立して発掘、育成をし、多くのハングリーな選手を来日させました。ところが、そのうち2軍の試合に出ていた選手がロッカールームでソックスを盗んで、バレないように何重にも履いていたと、当時のカープの選手から聞いたことがあった。給料泥棒どころか、本当の泥棒だよ(笑)。NHKの阪神VS広島の野球中継中に、ご一緒した山本和行さんにその話をしたら、一切否定もせず『そうなんだよね』って(笑)」(ダンカン)

 今や世界一にも輝くジャパニーズ・ベースボールだが、金づる以外の何ものでもなかった時代もあったのである。

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