雑すぎるシナリオや、ヒロイン橋本環奈の悪評などで、終わってみれば平均視聴率のワースト記録を塗り替えたことと、主題歌を歌ったB’zを「紅白歌合戦」に初登場させたくらいしか残るものがなかったNHK朝ドラといえば、「おむすび」だ。
比較的評判がよかったのは、ヒロインの姉・米田歩を演じた仲里依紗だろう。「おむすび」のテーマのひとつ、「ギャル」を地でいくキャラクターがハマッていて、「仲里依紗が主役ならよかったのに」という声が聞かれたほどだ。
4月13日の「情熱大陸」(TBS系)は、そんな仲にスポットを当て、2023年11月から密着取材したものだった。
まずは放送開始から大きな話題となり、数々のテレビ賞を受賞した「不適切にもほどがある!」の撮影現場からスタート。主人公の阿部サダヲとにこやかに会話する姿が見られた。
取材スタッフから「役作りとか今回、何かしたことは?」と質問されて、
「今回の役は…したかなぁ?いつもあんまり準備…(しない)。昨日、夜中にネイル取ったぐらいです」
そう言って、手をカメラに向ける。取材は穏やかな雰囲気で進んでいるように見えた。
同時期に「おむすび」の撮影が始まり、こちらの現場では自身のYouTube撮影でおちゃらける様子や、慣れない関西弁に苦労しているところ、さらには母親役の麻生久美子に子育てと仕事の両立の苦労をこぼす姿などが、取材カメラに収められていた。
「おむすび」撮影の合間に取材スタッフが「(ドラマ撮影時は)練習とかもなく、台本も見ずに?」と質問すると、
「台本、見てますよ。携帯に写真撮って入れてます。『今日はこれだから』っつって、お風呂で見たりしてます」
少々疲れた表情ながらも笑顔で答えたのだが、スタッフとのやりとりはさらに続く。
「努力の跡みたいのがあるのかなと思って。それを撮れたらいいなと思ったんですけど、残さないタイプですか」
「いや、ヘラヘラしてる。やりたいんですけどね、努力の跡。付箋つけたり…。付箋とかつけたことない。本当に付箋とかつけたことない」
ここで仲は複雑な表情になる。結局、仲サイドのスタッフから「それ以上のインタビューは遠慮してほしい」と促され、取材はその後、5カ月もの空白があった、とのことだった。
これを見て、取材者の質問の仕方が失礼だった、という見方もありそうだが、それ以上に彼女が「おむすび」の現場に相当なストレスを感じていたのではないか、と。
その証拠に、密着再開後に収められた、自身がプロデュースしているアパレルブランドの、期間限定ショップの準備に追われる姿は、忙しくしながらも生き生きしていた。そして夫の中尾明慶と夫婦で共演するUber EatsのCM撮影現場は、和気あいあいとした雰囲気だった。
それに比べて「おむすび」の現場では、どこか苦悩を感じさせる場面が多く見られた。
ヒロイン橋本環奈とのカラミを捉えた場面はほぼなく、最後の最後に、仲がクランクアップした際、橋本から花束を渡される場面でチョロッと映っただけ。これが全てを暗示しているように思えてならなかった。
彼女もまた、橋本に振り回された「被害者」のひとりだったのではないか、と。今後2人が共演することがなかったら、そう考えて間違いない。「おむすび」、いや、橋本の「闇」は深い。
(堀江南/テレビソムリエ)