さて、そんな開幕前夜、記者は店内にカープ選手のサイン色紙が多数飾ってある広島市内のお好み焼き店で腹ごしらえをしようとドアを開けてみた。が、いつまで待っても満席で入れない。代わりに向かった別の鉄板焼き店も深夜2時までカープファンであふれ、またしても入店できず。なんという盛り上がりの「前夜祭」なのか!
そして、迎えた3月27日の開幕日。当たり前だが、すでにチケットは完売しており、記者はマエケンが先発するヤクルト戦を広島市内の串焼き店「カープ鳥」で、地元ファンとともにテレビ観戦するべくスタンバイした。「福井優也」=ピーマン肉詰め、「マエケン」=ヒナ皮、「新井貴浩」=チーズつくね、「松山竜平」=椎茸、「緒方監督」=心臓‥‥など、いちいち選手や首脳陣の名前が付いた焼き物を注文しつつ、プレーボールである。
カープファンだらけの店内はまさに一喜一憂。2回裏に先頭打者のグスマン(30)がセンター前ヒットを放つと、カップル客の男性が「打ったよー」と歓声を上げ、店内は盛り上がる。
3回表、ヤクルト・川端慎吾(27)が内野安打で出塁したあと、マエケンが雄平(30)に死球を与えた瞬間、先の男性客は「いけんいけんいけん」と興奮気味に。
ちなみに、この男性客のパートナーであるカープ女子にお気に入りの選手を聞いてみたところ、
「私、丸(佳浩)が好きなの。ピンク、かわいいでしょ」
リストバンドの色が魅力的なようである。
その丸は4回裏、走者を二塁に置いたチャンスで、三振に倒れる。すると作業服姿のオジサンが「丸は打たんのぅ」とガックリ肩を落とし、トイレに立とうとした中年客も思わずのけぞってしまう。だが、すぐに「ここからじゃ~」と応援に力が入るのだ。
カープの選手が打てばカープ女子が「やったーっ!」「すごいな、ヒーローや」と絶叫。あるいは菊池涼介(25)の打席では「菊池ね、幼少期からヒゲがあるんよ。知っとる?」と、ちょっとしたトリビア問答を仕掛けつつ、試合に見入る。アナウンサーが「勝負はここからです」と声を上げれば「そうよ!」と大きく同意するのだった。
その後も店内では「おっしゃー」「いったー」「角度はえかったんじゃがのぅ」「わー、もう!」と歓声と落胆の繰り返しが交錯。
結局、開幕戦は周知のように延長11回、4対2で惜敗。次々と客が席を立って帰ろうとすると、店員が「○番(テーブル)さん、ゲームセット」。精算をゲームセットと呼ぶのがこの店の流儀らしい。ちなみに、この「カープ鳥」では、優勝したら無料開放という大盤ぶるまいをするそうだ。