今年の日本シリーズは、難攻不落と思われた大谷翔平を初戦で攻略、その勢いで広島東洋カープが本拠地連勝スタートを飾った。32年ぶり4度目の日本一まであと2勝と迫り地元はお祭り騒ぎとのことだが、広島のシリーズ制覇をこんな有力なデータも後押しする。それは過去の日本シリーズでのカープの第3戦、そして第4戦の“勝率の高さ”だ。過去6回のシリーズでの第3戦の勝率は4勝2敗で勝率6割6分7厘。第4戦に至っては5勝1分の勝率10割なのである。仮に黒田博樹先発の第3戦を落としたとしても、第4戦で王手をかけることが出来る可能性が大なのだ。
とはいえ、こんなデータもある。それは過去6回出場のうち、初出場だった75年を除く5回が4勝3敗という熱いシリーズになったということ(その75年も1勝もできなかったが、2試合が引き分けとなり決着までに6戦かかっている)。そのうち、79年、80年、84年はみごとに日本一に輝いているが、86年と91年はすんでのところで逃している。特に86年は1引き分け3連勝のあとの4連敗。91年も先に王手をかけながらの逆転V逸だった。今回も2連勝とこれ以上ないスタートをきってはいるが、過去の傾向を考えると後半までもつれる可能性も大。油断は禁物なのである。
そういう意味で、もし黒田で第3戦を落とした場合、ポイントは第4戦となる。前述のとおり、カープは過去6回のシリーズで6戦無敗。第3戦で負けてもこの第4戦を取り3勝1敗と王手をかける可能性が高い。しかも、このパターンになった場合、過去にはどのチームも日本一に輝いているのである。そのまま押し切ったケースもあれば、2連敗を喫して逆王手をかけられたケースもある。だが、後者の場合、いずれのチームも最後の第7戦をものにしてシリーズ制覇を成し遂げているのだ。日本シリーズにおいて3連勝から4連敗は過去3度もあるが、1勝3敗からの3連勝逆転日本一は一度というのも不思議といえば不思議なのだが‥‥。
カープファンはもはや「日本一間違いなし!」というムードに包まれているようだが、データからはとにかく「4戦目を勝つ」ことが重要。いきなり2連勝をしたことで、第3戦の勝率のよさがよもやの大逆転負けへの布石にならないとも限らない。
むしろ第3戦の黒田で落とし、第4戦を勝つことこそが最も“日本一への近道”となる。過去の歴史は確実にそう言っている。
(野球ライター・上杉純也)