狭い国土でありながら、日本は都道府県によって風土も生活習慣も大きく異なる。そして、現代人の死因の多くを占める「ガン」においても、驚くほどの地域差が表れるのだ──。今回、仔細に調査された「日本のガン罹患地図」をもとに、ガンになる県民とならない県民、その相違点を克明にレポートする!
「75年にスタートした『地域がん登録』が、11年には40県まで増えました。登録精度も向上したので、初めて各都道府県における主要なガンの標準化罹患比と標準化死亡比を算出し、地図上に示しました」
こう話すのは、85万人ものデータをモニタリングして、全国の「ガン罹患マップ」を作成した国立がん研究センターの松田智大氏。
この標準化罹患比・死亡比とは、年齢構成が異なる集団間の比較に用いられる数字で、全国平均を100としている。つまり、罹患比で100より高い数字を示す県は、それだけガンと診断される確率が高く、死亡比が100を下回る県は、ガンで亡くなる確率が低いことを示している。
全国47都道府県の完全版の「ガン罹患マップ」は16年以降に作られる予定だが、現時点でも興味深いデータが並んでいる。
「男性のガン(全部位)では、北海道と東北、山陰と九州北部で標準化死亡比が高く、標準化罹患比もほぼ同様。ただし長野県と広島県は、罹患比は高いが死亡比は低いという傾向が見られます」(松田氏)
つまり、長野と広島は「ガンになっても治る県」と言える。この2県の中でも、特筆すべきは長野県の死亡率の低さだ。年齢調整死亡率の統計で、四半世紀にわたって全国1位の座をキープしているのだ。日本人の2人に1人がガンになり、3人に1人は命を落とす──。そんな現状にありながら、全国ワースト1位の青森県が103.7ポイント(07年調査の年齢調整死亡率)であるのに対し、長野県は72.7ポイントと、その差は歴然。
「長野県では自治体病院や国保診療所、JA長野厚生連の病院などがいい形で競争しながら、予防活動に取り組んできた。それが死亡率にも反映されたのでは」(医療ジャーナリスト)
そんな長野県だが、こと「大腸ガン」においては、全国でも高い罹患比を記録する。他には北海道、東北地方、山陰地方も高い罹患比だが、長野が並ぶ原因はどこにあるのか。
県民性の調査で知られるナンバーワン戦略研究所・矢野新一氏が推測する。
「がん研究所のデータでも、大腸ガンと加工肉(ハムやソーセージなど)の摂取との関連性は指摘されています。分布図を見ていると、食肉の加工が盛んな地域と大腸ガンがイコールになっていますね」
長野には「信州ハム」を筆頭に、加工肉の名産品が多い。もちろん加工肉だけが大腸ガンの原因とは言えないが‥‥。
松田氏は大腸ガンに限らず、予防のための5カ条は不変であると説く。
「喫煙を控える、過度な飲酒を避ける、運動をする、肥満を予防する、そしてピロリ菌などの感染症を避けるということ」
近年、この5カ条に迫るのが「塩分を控える」ではなかろうか。とりわけ「胃ガン」においては、がん研究所のデータでも原因として「ほぼ確実」と報告されているほどだ‥‥。