「肺ガンになる原因は、7割が喫煙です。いや、肺ガンだけでなく、胃ガンや食道ガンにおいても関連は『確実』ですし、肝ガンでは『ほぼ確実』、大腸ガンや直腸ガンでも『可能性あり』のデータが出ています。ガンの発生においては“百害あって一利なし”と言わざるをえないですね」(松田氏)
地図にあるように、文字どおり“真っ黒”な分布を見せたのが北海道だ。長らく喫煙率の高さが指摘され、一時は男女ともに全国トップ(近年は女性のみトップ)のスモーカーぞろい。実にわかりやすい肺ガンの罹患比であろうか。
矢野氏は県民性の見地から分析した。
「明治時代の北海道開拓政策において、多くは北陸や東北からの移民者でした。本来はおとなしくて粘り強い性格ですが、開拓者として乗り込んだ以上、男女ともに猛烈に働かなければならなかった」
そのため、人格を荒々しく変える必要があった。豪快にタバコを吹かすのも「キャラクター改造」の一環であったと推測できる。
北海道と同じく肺ガンの罹患比が多いのは、近畿や四国を中心とした西日本であるが──、
「かつて、ナチス・ドイツ時代は世界初の禁煙キャンペーンが開かれましたが、敗戦以降、ドイツ人は『タバコは健康に影響がない』と考えるようになった。そのドイツ人たちと同じように、タバコは健康に影響がないと考える人が西日本に多いという一面もあります」(矢野氏)
同じように西日本一帯に高い罹患比を示すのが「肝ガン」である。主要なガンの中では、極端に地域差が大きく、全国を100とすれば160以上の罹患比も見られると、国立がん研究センターは明かしている。
肝ガンへの関連としては、喫煙や肥満、感染症や糖尿病があげられるが、やはり決定的なのは「飲酒」ということになる。
「1日に日本酒で2合以下であれば、肝ガンへのリスクとしては認められない」(松田氏)
適量を大幅に上回るのが、近畿以西の酒量ということになるのだろう。古くから四国や九州の男は、酒豪のイメージが強い。
「社会的なことを考えず、自己中心的な考えが多いのが近畿や九州の男たち。中央省庁や警察の言うことに反発したがる。それに加えて体のことをあまり考えないから、アルコールがどんどん増えてしまうんです」(矢野氏)
そして気になるのは、自治体ごとのガン予防への取り組みである。冒頭で死亡率ワースト1位と書いた青森県だが、県民1人当たりのガン対策予算額では全国トップの826.2円(08年調査)と健闘している。
「国としてはガンによる死亡率を20%削減する目標を立てているが、島根県はこれを上回る男性26%減の目標数値を盛り込んでいます」(医療ジャーナリスト)
どこに住んでも「ガンになりにくい県」であってほしいものだ。