全仏オープンで悲願のグランドスラム制覇を狙う錦織圭。1989年の全仏オープン覇者で元世界2位のマイケル・チャンがコーチに就いたことで大躍進を遂げ、現在は世界ランク5位につけている。いまテニス界では、錦織のようにかつてのトッププレーヤーにコーチを依頼する選手が急増しているのだ。
注目を浴びたのは、昨年の全米オープンの準決勝に進んだ4人が、いずれも「レジェンド」に師事していたこと。スポーツライターが語る。
「世界ランク1位のジョコビッチはボリス・ベッカー、2位のフェデラーはステファン・エドバーグと、それぞれ元世界1位の選手とタッグを組んでいる。錦織を破って全米を制したチリッチは、“サンダーサーブ”のゴラン・イバニセビッチをコーチに据えています」
往年のテニスファンは、選手よりもむしろコーチの名前を聞いたほうが興奮するかもしれない。スポーツ紙デスクが熱弁をふるう。
「“ブンブン・サーブ”という愛称で呼ばれたベッカーの爆撃音さながらのビッグサーブはシビれましたね。88~90年のウインブルドンではいずれも決勝をエドバーグと対戦(89年は優勝)。優勝した96年の全豪オープン決勝では、正反対のプレースタイルのチャンと熱戦を繰り広げました。そのチャンは、92年の全米オープン準決勝でエドバーグと5時間26分の死闘を演じています(エドバーグの勝利)。テニスをしていなくても、当時はファミコンソフトの『ファミリーテニス』が大流行りだったので、彼らに馴染みがある中年は多いですよ。私は『ぶんぶん(ベッカーがモデルのキャラクター)』を好んで選んでましたね(笑)」
そして、この時代に最強の王者として君臨していたのが、グランドスラム優勝8回、世界ランク1位連続在位記録「157週」(歴代3位)の記録を誇るイワン・レンドルだ。そして、錦織のライバルがこの男にコーチ就任の依頼をしたという。
「もともとレンドルはBIG4の一人、マレーのコーチをしていたが昨年3月に師弟関係を解消。チャンスとばかりに、世界4位のベルディヒが昨年秋にコーチを依頼したのですが、レンドルは自身がシニアツアーに参戦していることもあり、『時期尚早』と断りました。そのシニアツアーでは、もう一人のレジェンド、ジョン・マッケンローが『誰も俺には頼んでこないんだ』とボヤいていたそうです」(前出・スポーツライター)
スタンドにいる「レジェンドコーチ」がテレビに映るたびに、「老けたな~」なんて言いながら懐かしむのもいいかもしれない。