ピース又吉直樹のデビュー小説「火花」はいまでも毎週1万部ほどが売れており、累計40万部超えの大ヒットとなっている。本体価格が1200円なので、又吉には5000万円近くの印税が入る計算だ。
相方の綾部祐二も火花人気に乗っかるべく、「2人で書いた」と言い出したり、「自分の分の印税は10%」などと主張するものの、取り分はもちろんゼロ。このままでは収入や露出面で格差が広がり、コンビ仲に悪影響を及ぼすのではという懸念もある。
芸人が書いた小説といえば、200万部を超えるメガヒットになった麒麟・田村裕の「ホームレス中学生」が筆頭にあげられる。田村には2億円近くの印税が入り、手元に残ったのは8000万円ほど。その大金を田村は3年ほどで使い切ったという。
本が発売された2007年当時には、相方の川島明も格差ネタを口にしていたが、とくにコンビ仲が悪くなることもなく、現在では小説が話題になることもほとんどない。理由としては田村に作家として身を立てる気がまったくなく、「ホームレス中学生」のヒットはあくまでフロックだと受け止めていたからだろう。印税を使い切った理由も、父親に家を買ってあげたり兄の事業資金を出したからであり、生活が急に贅沢になったわけでもないようだ。
その翌年に出たのが、ロザンの宇治原史規をモデルにした自伝的小説の「京大芸人」。実はこの小説、著者は宇治原ではなく、相方の菅広文が書いたもの。しかも印税は2人で折半しており、続編も合わせて累計20万部なので、およそ1000万円ずつを手にしたことになる。
そのロザンは印税や賞金だけではなく、片方がピンで出演した時のギャラさえ折半しているというから驚きだ。高校の同級生だった2人はコンビ愛の深さで知られており、小説がヒットしてあぶく銭が入ったくらいでは、その仲にヒビが入ることはないようだ。
そんな麒麟やロザンに比べると、ピースはコンビ分裂の可能性も高そうだ。2人は東京NSCの同期ではあるものの、コンビ結成は数年後。出身地も又吉が大阪、綾部が茨城と関連がなく、年齢も3歳違う。むしろコンビとして活動しているのが不思議なほどである。
表舞台に出てきたのも、綾部が「人志松本のすべらない話」(フジテレビ系)で先に人気を博し、その後にキングオブコント2010での準優勝でコンビとしても注目されたという経緯がある。当初は又吉のほうがオマケ的に扱われるなど、現在とはまさに隔世の感だ。
ただ、コンビ格差が少なくない芸人の世界のなかで、ピースはお互いがまったく違うキャラで目立っている数少ない成功例でもある。又吉が文芸芸人のポジションを確立し、綾部はしゃべくり芸人として活躍し続けていけば、「実はコンビの2人」として両立していけるのかもしれない。
(金田麻有)