新幹線の車内でガソリンをかぶった老人は火を放ち、いじめを苦にした中学生は電車に飛び込んだ‥‥。みずから命を絶つ、痛ましいニュースが連日のように報じられている。日本では、毎年3万人近く自ら命を絶つ人々が生まれているという。有名人に目を向けても、まさにその縮図──。数十年にわたり繰り返されてきた悲劇は、あの時、なぜ止められなかったのだろうか。
有名人の悲痛な報道を聞かなかった年はない。
最近大きくメディアを騒がせたといえば、13年の藤圭子だろう。
晩年の藤は、娘・宇多田ヒカルが成功を収めて金銭的な不安はない一方で、精神的な不安定さを抱え、夫ともくっついては離れで、6度の結婚と離婚を繰り返し、最後は別れていた。
芸能ジャーナリストの佐々木博之氏が語る。
「それでも元夫は藤さんが心配で、彼女の面倒を見るようにマネージャー役の男性を一緒に住まわせていたというんです。彼女も食事や買い物など、身の回りの世話をしてくれる男性を信頼していた。ところが、その男性は夜の仕事を持っていて、朝帰宅してきて寝てしまう。藤さんが飛び降りたのは、ちょうど彼が眠っている早朝でした」
自殺がもたらすのは何も本人の破滅、死ばかりではないはずだ。今回掲載する事例は、過去に自殺した有名人たちのほんの一部にしかすぎない。100を優に越える悲劇が繰り返されてきたわけだが、例えば、美形の俳優が地上47階の高さから飛び降りたケースを見てみよう。
沖雅也は〈オヤジ、涅槃で待つ〉と書いた遺書を遺していた。直後から「オヤジ」こと所属事務所社長で養父だった、日景忠男氏が世間の注目を集めるようになった。
芸能レポーターの石川敏男氏が言う。
「もともと沖さんの側近といっても違和感がありましたが、〈涅槃で待つ〉という言葉によって、世間一般にそういう関係だったのかと‥‥」
日景氏はその後、美少年を愛好するキャラクターを隠さずにタレント活動を行うようになったのだった。
岡田有希子が18歳という若さで命を落とした際には、ファンの後追い自殺も社会問題化。同様に、hideも結果的にファンの後追いを誘発してしまった。
「彼はドアノブにかけたタオルで首をつって亡くなりましたが、実は事故死だったとの説も根強く残っています。当時のhideは頸椎の不調に悩んでいて、整骨院でヒモを使って首を牽引する施術を受けていたそうなんです。自宅でも同様の施術を試みていたと‥‥」(芸能記者)
ところで、自殺手段を見ると「首つり」がダントツで多いようだ。
自殺予防の心理学に詳しい、新潟青陵大学大学院教授・碓井真史氏が話す。
「死のうとした時、首つりはいちばん簡単で確実な方法だと思います。ただし現代は情報にあふれているので、失禁などで死に方が汚く、惨めだとわかっている。それだけに、飛び降りに衝動的な行為が多い反面、首つりにはより死ぬ覚悟が感じられてしまいますね」
仕事が減少し、借金苦で酒に溺れていた古尾谷雅人も「俺が死んだら俺の偉大さがわかる」と妻に口走った3日後、やはり自宅で首をつっている。
「ちょうど役者が役者だけでは窮屈になってきた時期だったかもしれません。今では役者がバラエティ番組で人気者になるのも珍しくありませんが、頑固な古尾谷さんには難しかったのでしょうかね」(前出・佐々木氏)