芸能

藤圭子と「昭和歌謡」の怨念(4)救急車で搬送されても生放送には帰ってきた

20130919p

 デビュー当時、しばしば「お人形さんのよう」と形容された。色白の愛らしい顔だちは、演歌歌手と思えぬほど際立っていた。さらにもうひとつ、デビューと同時に日本中を席巻したことで、藤圭子は自分の時間を持てぬほどの激流に巻き込まれる。それこそ「人形のように」動かされる日々であった──。

 藤圭子とは「石坂まさを門下」の兄弟弟子であり、後に歌手をあきらめ、現場マネジャーを長らく務めた成田忠幸が振り返る。

「僕がスケジュールを担当するようになって、さすがにこの日は無理と先方に断りを入れるんです。その瞬間、電話している僕の頭をパカーンと叩いて『夜中の2時なら空いているだろうが!』と怒られた」

 それが圭子の恩師であり、プロデューサーであった「石坂まさを流」である。圭子をデビューさせた69年でも28歳と若く、仕事を入れるだけ入れられるバイタリティがあった。

 もちろん、圭子もデビュー直後の「新宿25時間キャンペーン」など、細く小さな体を懸命に稼働させた。ただし、シングルで20週連続、アルバムで42週連続の1位という異常な人気は、休息を与える暇もなかったと成田は言う。

「移動する時は僕が肩を支えて、彼女が寝たまま歩いたこともあったよ。それと日本テレビの『紅白歌のベストテン』の収録が渋谷公会堂であり、そのリハーサルの最中、生理の出血がひどくて救急車で運ばれていった。それでも生放送には帰ってきて、普通に歌っていたから」

 デビューから5年が経った頃、やはり公開収録だった「8時だヨ!全員集合」(TBS)の会場で、激しく口論する圭子と石坂を目撃した。

 その原因が何であったのかはわからない。ただ、石坂が事務所を立ち上げて5年の間に、60人ものスタッフが入れ替わっている。現場は若手ばかりで混乱し、圭子と石坂のコミュニケーションも取りづらくなっていた時期だったと成田は言う。

 そんな石坂の「なりふりかまわぬ売り込み」を知るのは、フジテレビの花形プロデューサーだった千秋与四夫である。フジで「歌の競演」や「今週のヒット速報」などを担当していた千秋のもとには、新人歌手を抱えたマネジャーたちが絶えず列をなす。

「僕は当時、新宿のライオンズマンションに住んでいたんだけど、そこに石坂まさをが3日連続で売り込みに来た。林家三平さんの紹介ということもあって3日目にようやく対面したけど、毎日、神奈川の相模大野から通ったというんだよ」

 石坂流の“大風呂敷”であり、実際は千秋のマンションから歩いて30秒ほどのところに住んでいたのだ。そのことを知った千秋は苦笑しながら、いつの間にかペースに乗せられていく。

「ウチの圭子は流しをやっている頃、畠山みどりさんの『恋は神代の昔から』も歌わせてもらってました」

 千秋が畠山と結婚して間もない頃だった。あの手この手でプロデューサーの気を引こうとするが、石坂が持参したデビュー曲「新宿の女」(69年9月)のカセットテープは、千秋にはピンと来なかった。

「あなた、この子おもしろいわよ。低音はドスが効いているし、高音もきれいだから売れると思うわ」

 先に反応したのは妻のみどりである。歌手として大先輩の畠山がそう言うのなら‥‥千秋は自分の番組で藤圭子を推してやろうと思った。

 間もなく石坂が圭子を連れてくると、歌のイメージと違う可愛らしさに驚いた。さらに、石坂に対して絶対服従の態度であったことも──。

◆アサヒ芸能9/10発売(9/19号)より

カテゴリー: 芸能   タグ: , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    なぜここまで差がついた!? V6・井ノ原快彦がTOKIO・国分太一に下剋上!

    33788

    昨年末のスポーツニュース番組「すぽると!」(フジテレビ系)降板に続いて、朝の情報番組「いっぷく!」(TBS系)も打ち切り決定となったTOKIOの国分太一。今月30日からは同枠で「白熱ライブ ビビット」の総合司会を務めることになり、心機一転再…

    カテゴリー: 芸能|タグ: , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<寒暖差アレルギー>花粉症との違いは?自律神経の乱れが原因

    332686

    風邪でもないのに、くしゃみ、鼻水が出る‥‥それは花粉症ではなく「寒暖差アレルギー」かもしれない。これは約7度以上の気温差が刺激となって引き起こされるアレルギー症状。「アレルギー」の名は付くが、花粉やハウスダスト、食品など特定のアレルゲンが引…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<花粉症>効果が出るのは1~2週間後 早めにステロイド点鼻薬を!

    332096

    花粉の季節が近づいてきた。今年のスギ・ヒノキ花粉の飛散量は全国的に要注意レベルとなることが予測されている。「花粉症」は、花粉の飛散が本格的に始まる前に対策を打ち、症状の緩和に努めることがポイントだ。というのも、薬の効果が出始めるまでには一定…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
エスコンフィールドに「駐車場確保が無理すぎる」新たな問題発覚!試合以外のイベントでも恨み節
2
これも「ラヴィット!」効果…TBS田村真子アナ「中日×巨人で始球式」に続く「次に登板するアナウンサー」
3
日本人に大打撃!タイ政府「外国人締め出し」で長期滞在とビザ取得が困難に…そして口座凍結まで
4
ヤクルト・村上宗隆「上半身のコンディション不良」って何?「ポスティング移籍金」に影響するからと…
5
【NHK朝ドラ】今田美桜と河合優実の「見事なあんぱん」が弾む出色CMがコレだ!