「桑田に弟子入りして下半身を鍛え直せ」
キャンプ中の練習試合では、いまひとつピリッとしない日本ハムの斎藤佑樹 (23)。今季は“ポストダルビッシュ”の期待もかかるが、ヤクルト、巨人で投手コーチを務めた解説者の角盈男氏は「まだまだ課題あり」と注文をつける。
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最初に言っておきたいのですが、ダルビッシュと比べられては斎藤がかわいそう。メジャーが100億円出す投手と斎藤では器が違いすぎる。それは栗山監督もわかっているでしょう。首脳陣が斎藤に求めているのは、1年間ローテーションを守って2桁勝ってくれというレベル、でしょう。ただ私が見るかぎり、このノルマも簡単ではない。その理由は今年取り組んでいるフォームの改造にあります。
ご存じのように、斎藤のフォームの特徴は、軸足(右足)が折れるところにあります。昨年は始動の段階から軸足を折っていました。今年は、左足を上げるまでは伸ばしたままで、そのあとに軸足を折るというフォームに変えています。このフォームだと体の反動を使えるので、球のスピードは増します。「斎藤は球威がない」という周囲の評価を彼自身も自覚しているからこその改造なのでしょう。しかし、ここに落とし穴がある。
一度伸ばした軸足を折ると、当然、頭の位置も下がります。頭が上下動すると、投球も高低にばらつきやすくなる。これが、このフォームのデメリット。実際にキャンプ中の練習試合では、高めに浮いた球をホームランされていますよね。
いくらスピードを増しても、それが高めの棒球になっては意味がない。155キロくらいまで出れば話は別ですが、反動を使ったフォームに変えてもせいぜい140キロ台後半でしょう。彼の持ち味は投球術とコントロール。その意味でも、それが生かせる昨年のフォームに戻したほうが賢明でしょう。
「球威を増す」という課題に取り組むことは間違っていません。ただ、軸足を折り続けたフォームで球威を増すには下半身の粘りが必要。そのためには尋常ではない足腰の強化が求められますが、これは本当に苦しいことです。
それをやったのがロッテの大エースだった村田兆治さんや元巨人の桑田真澄です。私は桑田とは巨人で同僚でしたが、ランニングの質量はチーム随一。中腰の状態で左右にトスされるボールを、体をひねってキャッチし続ける練習などにも、本当にストイックに取 り組んでいました。
斎藤の下半身は、まだまだアマチュアレベル。しかし、キャンプでニコニコ笑っている姿からは、桑田や村田さんほどの下半身強化に取り組んでいるようには見えません。だからこそ、反動を使った“安易な”フォームを選んだのかもしれません。
今のままではシーズンに入っても一発病の危険は解消されないでしょう。投球術で10勝できたとしても、15敗は覚悟しなければならない。この数字を逆にするためには、桑田に弟子入りするくらいの覚悟で下半身強化に取り組む必要があるでしょうね。