今年6月の女子サッカーW杯カナダ大会で惜しくも連覇を逃したなでしこJAPAN。女王復権を目指し、来年のリオ五輪に向けて新たなスタートを切った。だが、チームは早くも「空中分解」の危機に瀕しているというのだ。
女子W杯で2大会連続決勝進出を決め、世界から名将とたたえられた佐々木則夫監督(57)。「若手発掘」をテーマとした8月の東アジア杯こそ1勝2敗の3位に終わったが、
「帰国時の中部国際空港で、すでに日本サッカー協会の大仁会長から『(リオ五輪)予選は大変だから頼んだぞ』と言われ、準備を開始していると話していた。協会との契約は9月までですが、佐々木監督の続投で間違いないようです」(スポーツ紙サッカー担当記者)
リベンジの舞台となるリオ五輪に向けて燃えているかと思いきや、心境は複雑なようなのだ。スポーツライターが明かす。
「佐々木監督は、続投には消極的でした。次のステップとして、Jリーグ監督の座を狙っていたからです。実際に大宮アルディージャから打診があったのですが、実は、監督就任オファーではなく、アンバサダー的なフロント入りの話で、かなりショックを受けていました。『女子代表監督は学生レベルの監督』と、暗に言われたようなものですから」
夢破れた佐々木監督だが、W杯優勝監督として、講演の依頼は相次いだ。女性を指導し成功した手本として、大企業や自治体などから熱い視線を送られたのだ。
「一般的に、企業の幹部などを対象とした講演料は30万円から50万円ほどが相場ですが、世界一の監督だけに、その2倍、3倍の高額オファーもあったと聞いています」(サッカー協会関係者)
ところが、これが火ダネとなった。代表選手たちの耳にも「次はJ1監督」「講演料は100万円」といった話が届いたからだ。協会関係者が続ける。
「一部の代表選手からは『さっさとJリーグに行けばいいじゃん』『結局、私たちで儲けてるんじゃないの』なんて声もあった。というのも、トッププロの澤穂稀(36)でさえ、年間の契約料は約500万円。これは破格で、通常はその2分の1ほどです。住居や車が支給されるアメリカと比べても、水準は低い。一流企業のOLのほうがずっと稼げるのが現状なのです。代表メンバーの中には、所属先の企業でレジ打ちの仕事をして生活費を稼ぐ選手もいる。『W杯準優勝の各選手に特別ボーナス3万円支給で歓喜』という報道も、あながちオーバーな表現ではありませんでした」
前出・スポーツライターもこう言う。
「W杯から帰国し、主将の宮間が『女子サッカーが文化になってほしい』と発言した裏には、切実な思いが込められていた。W杯や五輪でメダルを獲ってもブームとして盛り上がるだけで、女子サッカー選手の社会的ステータスや待遇は一向に変わらない。だからなおさら、講演料で潤い、J1と接触した佐々木監督と代表選手との溝は深まってしまった。この先、若手のモチベーションまで低下すればどうなるのか‥‥」
さらに、チーム編成にも問題が山積していると指摘するのは、前出・サッカー担当記者である。
「カナダW杯予選で一度は澤を外すなど世代交代に舵を切りながら、本番ではベテランを招集。主将の宮間あや(30)が『尊敬する澤の最後のW杯』と話し、必死に若手を奮起させていました。リオ五輪のメンバーに注目が集まります」
電撃結婚を発表した澤などは「現役であるかぎり、リオを目指す」と話し、ヤル気満々だが、
「佐々木監督は『(ベテラン組に)力を貸してほしいと思えばこちらから話すし、若い選手を使う方針となれば仁義を切る』と言っていた。澤はスーパーサブでも納得済みだけに、東アジア杯で結果を残したDF・京川舞(23)やMF・杉田亜未(23)、MF・増矢理花(19)で若返りを図るつもりでしょう。あとは宮間に代わる後継者の育成を怠ったツケをどう解決するのか」(前出・スポーツライター)
難問山積である。