突然の分裂騒動が社会的ニュースとなっている山口組。そんな中、突如東映ビデオが、来年1月「山口組三代目 田岡一雄自伝」(徳間文庫カレッジ刊)を原作にした「山口組三代目」(73年)「三代目襲名」(74年)、関連作となる「山口組外伝 九州進攻作戦」のDVDソフト発売を発表した。中でも、「山口組三代目」「三代目襲名」は、数ある高倉健主演作品の中でもビデオ以降のソフト化が行われていなかっただけに、このニュースに映画関係者は大いに驚かされることとなった。
「特に『山口組三代目』は、実在の山口組と田岡三代目を実名で登場させたということで大きな話題を呼び、公開時の観客動員はものすごかったです」(映画ライター)
物語はまさに田岡三代目の青春時代を描いたものであったが、高倉が演じることでヒーロー的な扱いとなったこともあり、製作会社である東映はマスコミから「これは山口組の宣伝映画だ」と猛烈な批判を受け、さらに警察からも目をつけられたものだった。その状況にむしゃくしゃしたのだろうか、当時の東映社長である岡田茂氏が思いついた企画が、深作欣二監督「県警対組織暴力」(75年)という作品だった。
「菅原文太が、青年極道(松方弘樹)に共感しながらも、次第に彼との対立を避けられなくなる悪徳刑事を演じた作品。『仁義なき戦い』の延長線上にある傑作のひとつです」(映画ライター)
「極道も警察も結局は同じような存在ではないか」という強烈なメッセージを訴えた1作。危うく封印されかけた問題作は、別の名作を生み出すきっかけとなっていたのだ。