他にもディズニーの「ライオンキング」と手塚治虫の「ジャングル大帝」のように、漫画の世界からの盗用・剽窃も数え切れないほど指摘されてきた。また意外なところでは、稲川淳二の怪談話のような、著作権が曖昧なものにもパクリ疑惑があるという。
「そもそも怪談話はパクリや創作が横行している世界で、稲川も当初は人から聞いて話を集めていたんです。しかし、需要に追いつかなくなったため、当時は絶版になっていた『新耳袋』という本から話をパクるようになった。ところが、この本が復刊されたことで話がこじれ、著者の中山市朗との間でトラブルとなったんです。最終的には無名の中山が泣き寝入りするハメになっています」(当時を知る出版プロデューサー)
何とも悲惨な話だが、これら以上にパクリが激しいと言われるのが音楽業界だ。「文化は模倣によって継承される」と言われるものの、売らんかなの安易なパクリと、「文化の継承」との差はきわめて曖昧だ。
「サザンやB’z、ミスチルなどに代表される大御所が、洋楽から多大な“インスパイア”を受けて作曲していることは周知の事実でしょう(笑)。ヒップホップやDJ文化を持ち出すまでもなく、現在、重要なのは原曲を超える独自性や理解力、知識、芸があるかどうか。コピー文化の時代だからこそ、愛のないパクリはすぐ見抜かれてしまいます」(音楽専門誌ライター)
このオリジナル性が欠如した“パクリ疑惑”を頻繁に指摘されてきたのが“カリスマ歌姫”として君臨した浜崎あゆみだ。
「1~2曲ではなく、自分で作詞したという数十曲に対して盗用が指摘されており、ネタ元も椎名林檎やCocco、中島みゆきなど比較的わかりやすく露骨なものが多かった。そういえば、浜崎と同じエイベックス所属の倖田來未や大塚愛にも同様の疑惑が頻繁にささやかれていましたね」
ただし、音楽界での盗作疑惑はウヤムヤに終わっているのが実情だ。どれだけ似ていたとしてもシラを切り通せばOKで、故・相田みつを氏や、aikoなどの作品からの盗用を認めて謹慎した元「モーニング娘。」の安倍なつみのようなケースはレア中のレア。
訴訟ざたにまで至るケースもほとんどなく、最近では、「銀河鉄道999」などを描いた漫画家の松本零士氏が、槇原敬之の曲の歌詞が盗用だとして訴えた裁判が目立つ程度。この訴訟では、盗用は認められず槇原側の勝訴。松本氏は名誉毀損で220万円の支払いが命じられた。
裁判で盗用が認められたケースはさらに少ない。
服部克久氏の書いた児童向けの曲「記念樹」の7割以上のメロディが作曲家・小林亜星氏の曲「どこまでも行こう」からのパクリとして、小林氏が服部氏を訴えた裁判があるくらいだろう。
「裁判は時間も労力もかかりますし、ゴタゴタのイメージダウンを考えれば、現実的な解決策を取ることが多い。吉田拓郎『祭りのあと』や長渕剛『RUN』などのように、内々に引用を認めて謝罪し、印税の一部などを提供する“オトナの方法”での解決です」(音楽誌編集者)
この手法で最も有名なケースといえば、10年開催の上海万博のPRソング「2010等〓来(〓はにんべんに「尓」)」が、日本のシンガーソングライター・岡本真夜の「そのままの君でいて」にそっくりだとして話題となった一件だろう。
「この時の万博事務局が見せた危機管理対応はみごとでした。暫定的に曲の使用を禁止する一方で、すぐ水面下で岡本サイドと話し合いを始め、あらためて曲の使用契約を締結。岡本サイドが手にしたギャラは、総額3億円とも言われています」(スポーツ紙記者)
コピー天国である中国の“神対応”は皮肉ではある。今回の五輪エンブレム騒動を見るかぎり、盗作に関して日本も中国を笑うことはできないだろう。