「芥川賞」を受賞して近年まれに見る大ヒットを飾ったピース・又吉直樹の「火花」。もちろん、大ヒットコンテンツの映像化には業界内で大きな注目が集まっている。
「又吉の所属する吉本興業は、かねてからテレビ番組を自社制作したり、芸人のグッズ販売なども自社で手掛けたりと、コンテンツ事業にも力を入れてきました。今回、小説がヒットしたことで、当然、ドラマや映画など、どういう形で映像化するのかに、がぜん注目が集まっています」(芸能プロ関係者)
そうした中、本命と目されていたのが映画化だった。
「吉本は『沖縄国際映画祭』を主催するなど、映画事業に力を入れていますからね。これまでもダウンタウン・松本人志や品川庄司・品川祐、板尾創路など自社の人気芸人を監督に据えて映画を作らせるなど、かなりアグレッシブでしたが、際立った成果は出ていません。そこで、又吉監督による『火花』の映画化で勝負に打って出るのではないかと噂されていました」(前出・芸能プロ関係者)
ところが、吉本が選んだのは映画でも民放各局でもなく、海外の大手企業だった。
「結果的にアメリカの大手配信事業会社の『ネットフリックス』とタッグを組む道を選びました。ネットフリックスは全世界に5700万人の会員を持つアメリカ最大手の映像配信会社で、スマホやテレビ、パソコンなどを介し、定額制でドラマや映画などの映像コンテンツを楽しむことができるサービスを展開しています。今回の吉本さんの決断を見るにつけて、日本もこれからは映画やテレビではなく、ネットを介した映像配信事業が主流になっていくのかもしれません」(前出・芸能プロ関係者)
最近は、日本テレビが資本提携する「Hulu」やテレビ朝日とサイバーエージェントが共同出資する「AbemaTV」、エイベックスが力を入れている「dビデオ」「BeeTV」などの動画配信サービスが話題を集めている。
スマートフォンの普及につれて、こうした動画配信サービスがテレビや映画に代わる新たな娯楽として受け入れられつつあることは時代の流れだが、吉本がネットフリックスを新たなパートナーに選んだことは、これまでメディアの主役だったテレビや映画の終わりの始まりなのかもしれない。
(しおさわ かつつね)